面接

藤村 「一応こちらに履歴書をお預かりしてますが、確認のためにも質問させてください」


吉川 「はい」


藤村 「えーと、吉川さん。年齢は……」


吉川 「24歳です」


藤村 「奇遇ですね! じゃあ私と4つ違いだ」


吉川 「え、あ。はい。そうなんですかね」


藤村 「24歳と言ったらあれでしょ。織田信長が桶狭間で戦った時が27歳だからちょうど3つ違いですね」


吉川 「ん? あ、そうかもしれませんけど。何がちょうどなんですかね?」


藤村 「同じ二十代だし」


吉川 「代で? さっきの奇遇ってのもちょっと気になってたんですけど、十年スパンでギュってちょうど感を出してます? それだと結構いると思いますけど」


藤村 「そうですね。私の周りにも結構います。よくご存知で」


吉川 「そりゃいるでしょうね。二十代の人って大きな枠なら」


藤村 「で、誕生日の方は……ありますか?」


吉川 「あります。え? ないって人いました?」


藤村 「大体皆ありますけど」


吉川 「ですよね。冴羽獠じゃないんだから」


藤村 「好きな干支はなんですか?」


吉川 「好きな!? 自分のじゃなくて好きなやつ?」


藤村 「嫌いですか?」


吉川 「いや、嫌いでもないです。しいていうなら、辰年かな」


藤村 「あー、聞いたことあります」


吉川 「そりゃあるでしょ。干支は十二しかないんだから。どれかになりますよね」


藤村 「あの、あれですよね? 恥ずかしがり屋のやつですよね?」


吉川 「すみません。キャラクター性まで知りません。そうなんですか?」


藤村 「あれ、違ったかな。辰ってあれか。ゴリラのことでした?」


吉川 「龍です。十二支にゴリラいないでしょ。サルが既にいるし」


藤村 「えっとお住まいがここですと、ここに通うのは……右の方から来ます?」


吉川 「右って!? 右か左かは主観じゃないですか? 方角とかでなくて?」


藤村 「あ、そっかそっか。向かって右っていう意味で」


吉川 「いやいや、そこを取り違えてるわけじゃなくて。方角的には南東です。電車できました」


藤村 「あー、なるほど。ボヨーンってやつね」


吉川 「ボヨーン? 電車の? 電車のどのタイミングでボヨーンってなるの?」


藤村 「でも快速があるからボヨヨーンって感じですね」


吉川 「電車って概念にははまってるんだ。ボヨーンが。そういう風に形容する人はじめてだけど」


藤村 「で学生時代は……特になし、と」


吉川 「ええっ! 色々書いてません? やりましたよ。イベントとか」


藤村 「ろくでもなし、と」


吉川 「ろくでも。そういう風に判断されると思わなかったな」


藤村 「血液型が……」


吉川 「O型です」


藤村 「B型寄りのOって感じですかね」


吉川 「寄り? 寄ることってあるんですか?」


藤村 「まさかA型寄り?」


吉川 「O型としてしか知りません。多分どっちにも寄ってないと思いますけど」


藤村 「色は赤?」


吉川 「そりゃ、血ですから」


藤村 「じゃあちょっと厳しいかなぁ」


吉川 「厳しいの? 血が赤いと? 魔族みたいな人を募集してる?」


藤村 「でも大丈夫です。うちはマニュアルがしっかりしてるので未経験な人から無神経な人まで幅広く働いてますから」


吉川 「無神経な人も? 同僚にそういうのがいるのちょっと嫌だな」


藤村 「またまたぁ! お好きなくせに!」


吉川 「いいえ? 好きじゃないですよ? なんでそんな感じで距離詰めるんですか。遠慮してるわけじゃないですよ。いないでしょ、無神経な人を好きな人」


藤村 「そうですか? 私はどっちかと言うと好きですよ。スリッパと甲乙つけがたいくらい」


吉川 「スリッパと。スリッパに対する好みがそもそもないから。愛情感じる余地あります、あれに」


藤村 「私なんかは周りから限りなくゼロに近づいた神経なんて言われたりもしますけどね」


吉川 「格好いい言い方で! あなたが無神経なんだ」


藤村 「だいたいわかりました。では先に進んでいただいて、突き当りの扉の奥が面接会場になります」


吉川 「ここはなに!?」



暗転

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