自爆

    自爆シークエンスを開始します。


藤村 「しまった! 自爆システムが作動した」


吉川 「なんで!?」


藤村 「なんかいじってたら急に」


吉川 「なんかいじるなよ! なんでわからないものをなんかいじるの?」


藤村 「そうやって人類は道具を使うことを覚えたわけだろ?」


吉川 「最初期の原始人っぽいやり方ですべて切り抜けようとするなよ」


藤村 「もうわけわからん。こんな機械見たことないし」


吉川 「状況を考えろよ。極秘に潜入して見たことない機械を見つけて真っ先にすることがなんかいじることか?」


藤村 「真っ先にしたのは自撮りだよ!」


吉川 「自撮りもするなよ! なんで極秘に潜入して自撮りするの?」


藤村 「逆になんでしないんだよ? こんな状況ないぞ?」


吉川 「そうだよ。ないんだよ。普通はしない。なぜならしてはいけないから。してはいけないことをしている時に自撮りはしない」


藤村 「みんなやってるじゃん。回転寿司とかで」


吉川 「その末路どうなったか知らないのか? あれをやって得したやつ一人もいないんだよ!」


藤村 「怒らないでよ! 自爆シークエンスが始まるわ、怒られるわでダブルで凹むじゃん!」


吉川 「自爆シークエンスは凹んでる場合じゃないから。なんとかして止めないと」


藤村 「わかってるって言ってるだろ? 止め方You Tubeで検索してみる」


吉川 「ないだろ。You Tubeに謎の機械の自爆シークエンスの止め方」


藤村 「だいたいあるんだよ。盆栽の剪定の仕方から高血圧の下げ方までなんでもあるから」


吉川 「そんなの上げても再生数伸びないだろ。謎の機械の自爆シークエンスが開始して焦ってるやつ、全国にそれほどいないよ!」


藤村 「絶対あるはずだ! 軍艦のプラモの作り方や演歌のコブシの秘訣なんかもあるんだぞ」


吉川 「なんでジジイが見るコンテンツばっかり見てんだよ! その狭いターゲット層の動画の中でよくなんでもあるとか言えるな」


藤村 「型番がわかれば検索できるのに」


吉川 「型番ないだろ。民生品に自爆システム搭載してることないもん。これは独自開発のやつだろ」


藤村 「こうなったら最後の手段だ。ヤフー知恵袋で聞くしかない」


吉川 「最後の手段が頼りなさすぎだろ。お釈迦様が下ろした蜘蛛の糸よりも貧弱」


藤村 「あ、いきなり解答が来た! さすがヤフー知恵袋」


吉川 「まじかよ。侮れないな、ヤフー知恵袋」


藤村 「えっと……。『自爆システムの止め方はわからないのですが、昔ドラマで福山雅治さんが自爆を止めてるのを見ました。若い頃のましゃ最高ですよ!』だって」


吉川 「ヤフー知恵袋ぉぉぉぉ!」


藤村 「一応ベストアンサーにしておくかな」


吉川 「なんでだよ! 若い頃のましゃが最高だってこと以外なにもわからねえんだよ!」


藤村 「なんか続々と福山雅治主演のドラマの情報が集まってきてる。MVも最高なんだって」


吉川 「そっちのけてるんだよ! 発端の質問をそっちのけて盛り上がりがちなんだよ! 求めてない情報だけで賑わってるんじゃないよ!」


藤村 「どうする? 思い出話でもする?」


吉川 「覚悟を決めるなよ! まだ諦めないでいいだろ。なんで思い出話をしてしんみりバッドエンドみたいな終わりを望んでるんだよ。それはラスト10秒でいいんだよ」


藤村 「じゃ、ちょっとトイレ行ってきていい?」


吉川 「この状況で!? 一分一秒大事な時に?」


藤村 「漏らしていいならいいけど」


吉川 「漏らしてよくはないよ? でも自爆したらもう漏らす漏らさないじゃないからね」


藤村 「止めようとして漏らすのと、漏らさないで止まらないのどっちがいい?」


吉川 「どっちもよくねーよ。その二択しかない人生に至ったことが一番の過ちだよ」


藤村 「あらかじめ自爆シークエンスが開始する前にトイレに行っておけって言われてなかったし」


吉川 「言われないよね。そのピンポイントのタイミングでは。自爆シークエンスが開始すること予定になかったし」


藤村 「あ! 謎の機械と自撮りした動画がバズってる! 解除方法を知ってそうな人がいるぞ」


吉川 「本当か? 助かったー」


藤村 「知恵袋の方は若い頃のましゃが最高派と、今の福山雅治も最高派で揉め始めてる!」


吉川 「知ったこっちゃなさすぎるっ!」



暗転

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