クイズ王

藤村 「すごい! さすが物知りだなぁ。やっぱりクイズ王だけあるわ」


吉川 「いや、まぁ。その~」


藤村 「やっぱり知識の量もさることながら、答えるスピードが半端ないもん。さすがクイズ王!」


吉川 「いやぁ、それなんだけどさ。今は違うんだよね。ちょっと前まではクイズ王だったんだけど」


藤村 「今違うの? どういうこと? 王位を追われたの?」


吉川 「追われたっていうか。決定戦で負けたから」


藤村 「じゃ、クイズ何なの? クイズ大臣とか。クイズ元老院の一人みたいな感じになっちゃったの?」


吉川 「王政をしいてるわけじゃないんだよ。一応クイズ王とは呼ばれてたけど」


藤村 「クイズ王国の王だったんじゃないの?」


吉川 「別に国じゃなかったから。ただの愛称かな」


藤村 「じゃ、今の一人称は吾輩じゃないわけ?」


吉川 「クイズ王の時から吾輩ではなかったよ。そんな立場によって一人称を変えたりしないでしょ」


藤村 「王じゃない、ってことはもう税金とかで豪遊できないんだ?」


吉川 「王だった頃もしてないよ。クイズ国民なんていないし、税金も納めてくれなかったし」


藤村 「ということは、今は別のやつがクイズ王を戴冠してるのか」


吉川 「そうだね。次の大会は頑張るよ」


藤村 「そんな悠長なこと言ってる場合か?」


吉川 「え? どういうこと? 今から特訓しろってこと?」


藤村 「お前はいいのか? 王位を簒奪されたんだぞ?」


吉川 「簒奪っていうか、割と正式な手続きだったから。悔しくはあるけど」


藤村 「俺たちクイズ平民は、お前が王だからこそ安寧に生活できてたんだ」


吉川 「お前をクイズ平民だと認識してなかったよ。そりゃ、期待に沿えずに悪かったな」


藤村 「立ち上がるべきだろ! 今すぐにでも! クイズ王を倒すために」


吉川 「だから次の大会は一年後だからさ」


藤村 「そんなモタモタしてられるか! クイズ革命だ! 我々クイズ平民の力を見せてやろうぜ!」


吉川 「そういうシステムでクイズ王が変わった歴史はないんだよ」


藤村 「だろうな。玉座にふんぞり返って平和ボケしてる王ならわけないぜ」


吉川 「暴力で? ダメだよ」


藤村 「革命とは正義の暴力だよ!」


吉川 「クイズ王はそういう気持ちで待ち構えてないから。まさか暴力で来るって想定してないよ」


藤村 「だからこそ効果的だ」


吉川 「クイズの王なんだよ。クイズしかできない王と言ってもいい。統治能力なし」


藤村 「そんなことじゃ隣国にすぐ攻められるぞ」


吉川 「隣国もないんだよ」


藤村 「なぞなぞ王とか? 大喜利王とか?」


吉川 「そういう人もいるかもしれないけど、それぞれ名前としての王だから。領土とか持ってないよ」


藤村 「なら援軍も来ない。王を守るクイズ親衛隊はどのくらいの規模だ?」


吉川 「見たことある? そんな面白親衛隊。王は王だけ。そして倒せるのはクイズ力のみ!」


藤村 「そう思い込んで暗殺された王がどれほどいたか」


吉川 「暗殺もダメ。そりゃできるよ、相手も人間だから。でもそれは単なる殺人だから。普通の犯罪。王とか平民とか全く関係ない」


藤村 「でも相手は王だぞ? 突然法律を変えて前王を打ち首にするかもしれない。俺がクイズ王ならそうする」


吉川 「そんな物騒な世界観でクイズやってるやつ一人もいねーよ」


音  「ティロリン」


吉川 「あ、メッセージだ。『前クイズ王の資産をすべて剥奪しクイズ奴隷の身分落とす』なんだって!? くそ、あのクイズ王め! とんだ暴君だ。こうなったらクイズ革命しかない! 力を貸してくれ」


藤村 「は? クイズ奴隷の分際でクイズ平民の俺によくそんな口がきけるな」


吉川 「世界観に従順!」



暗転

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