ジェスチャー
吉川 「あ、よかった! すみませーん! ちょっとここに閉じ込められちゃって!」
藤村 「なにか言ってます?」
吉川 「あれ? 聞こえてない? これ向こうの音は聞こえるけど、こっちの音は届いてないのかな」
藤村 「なにか言ってるのか? それとも異常に挙動不審な人なのか、どっちですか?」
吉川 「映像は届いてるんだよな。どうにか気づいてくれ」
藤村 「身振り手振りでなんとかしようとしてる? この時代に?」
吉川 「これです!」
藤村 「箱? 壁? 壁を伝って。が~まるちょば?」
吉川 「それをこう!」
藤村 「エスカレーター? モヒカン? ゴリラ?」
吉川 「違う。こう!」
藤村 「ゴリラが……踊る?」
吉川 「ゴリラじゃないよ。ゴリラは違う」
藤村 「ゴリラが5匹? ゴゴリラ? 午後のゴリラ?」
吉川 「一旦ゴリラから離れて!」
藤村 「遠くのゴリラ?」
吉川 「違う。ゴリラにこだわらないでよ。そもそもゴリラのこと伝えたい人なんていないよ」
藤村 「ゴリラのことを伝えたい?」
吉川 「否定が難しい。否定を全然読み取ってくれない」
藤村 「ネガティブなゴリラ? マイナスゴリラ? チンパンジーひくゴリラ?」
吉川 「どっからでてきたのチンパンジー。余計な情報だけが増えていく」
藤村 「余計な情報をもったゴリラ?」
吉川 「余計な情報をよく読み取ったな。その精度でなんでゴリラを貫き続けられるんだ」
藤村 「貫かれたゴリラ? 串に刺さった? ゴリラ三兄弟? ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ三兄弟・ゴリラ♪」
吉川 「違うって言ってるのに歌いきるなよ。そもそもなんだよゴリラ三兄弟って」
藤村 「一番上は長男」
吉川 「歌い続けるの? もう違うよ。一兄弟もいないよ」
藤村 「一兄弟もいないっていう言い方、日本語としておかしいと思うけど」
吉川 「聞こえてるの? おーい!」
藤村 「ゴーリ?」
吉川 「聞こえてないのかよ。たまたま的確なツッコミが偶然でたのか。というかゴリラじゃねーんだよ。掛け声でゴーリ! なんて言うやつゴリラにだっていないよ」
藤村 「あべこべでチンパンジーなんて言うやつゴリラにだっていないよ?」
吉川 「惜しい! 惜しいけど、全然惜しくない。当たってたところでこっちの言おうとしてる趣旨とは違う。ゴリラ以外のところほぼ合ってるのに」
藤村 「ってか、なんでこんな状況なのにゴリラのことを必死に訴えてるの?」
吉川 「それはこっちのセリフだよ! 言ってないんだよ、一言も。ゴリラは」
藤村 「それはこっちのゴリラ?」
吉川 「どっちのゴリラだよ。そんな決め台詞言うやついないだろ。ゴリラがこっちにいることなんてほぼないから。ゴリラの立ち位置に関して言及する機会なんて人生で訪れることはないよ」
藤村 「ゴリラの立ち位置に関して言及する機会なんて人生で訪れることはない?」
吉川 「なんでピッタリ把握できたの、ここだけ! ゴリラに関連する言葉を読み取る特殊能力者なのか? 結構難しい言葉使ったよ? 言及とか機会とか、ジェスチャーで伝えられる人類は今後の歴史でもう二度とでないと思うよ」
藤村 「バナナが食べたい?」
吉川 「急にバカになったな。さっき言及とかビターッと当ててたのは何だったの? 今の流れでバナナ? それしか伝わらなかった?」
藤村 「ちゃんと伝わりました」
吉川 「聞こえてるの!? これ、音通ってるの?」
藤村 「ゴリラ踊ってるの?」
吉川 「聞こえてないのかよ。なんで一瞬会話みたいになったんだよ。気持ち悪いよ。その持ち前の洞察力を発揮してゴリラ以外の会話を成立させてくれよ」
藤村 「ゴリラ並みの握力でここを破壊して助け出してくれ?」
吉川 「もうそれでもいいよ! それでいいからここから出してくれよ! 全然ゴリラのことなんて言ってないけど結果的に出れればそれでいい」
藤村 「いやぁ、ちょっとわからないですね。すみません。スマホに打ち込んでそれを見せてもらえますか?」
吉川 「そういう方法、わかってるなら最初に教えてよ」
暗転
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます