なんで

吉川 「なんで俺が怒ってるのかわかってるのか?」


藤村 「多分、だいたい2割くらいで合ってるかなと思ってます」


吉川 「2割ってなんだよ」


藤村 「うっすら分かるんですけど、違うかもしれない。だいたい正解の確率は2割かなーって」


吉川 「わかってねーだろ。そういう言い方してる時点でわかってないよ」


藤村 「1割くらいですか?」


吉川 「お前の正解確率はどうでもいいんだよ」


藤村 「ヒント! ヒントください」


吉川 「そもそもクイズじゃないんだよ。当てる当てないじゃなくて反省を求めてるんだから」


藤村 「わかりました。ここはオーディエンスを使います」


吉川 「いないんだよ、オーディエンスは。周りの人に聞こうとしてるの? クイズじゃないんだよ。当てたからっていいことがあるわけじゃないんだよ」


藤村 「え、なんだ。そうなんすか? じゃ別にどうでもいいです」


吉川 「どうでもよくないよ。状況わかってる?」


藤村 「状況……。2割くらいは」


吉川 「また2割かよ」


藤村 「ま、待ってください。じゃ、この状況に対してテレフォン使います」


吉川 「テレフォン使う選択肢ないよ? 電話かけられたほうびっくりしちゃうだろ。今の俺の状況どうなってるかわかる、って聞くの?」


藤村 「うちのお母さん、こういうジャンル強いんで」


吉川 「そうだろうよ。お母さんはだいたいこういう状況慣れてるよ。特にお前の母親ともなれば」


藤村 「ちなみにこれ、何回までOKですか?」


吉川 「なんだよ、何回って」


藤村 「回答権ですよ。1回だけ? 残機なしはきついっすよ。せめて3回チャンスください」


吉川 「自分が怒られてる理由、そもそも3つも思い当たるのおかしくないか?」


藤村 「だからいけたらいけたでいいですけど、しくった時のために。3回までお願いします」


吉川 「いや、3回って。当てたところで当てたからどうっていうのもないからね?」


藤村 「まじっすか? それこっちに何のメリットあるんすか?」


吉川 「メリットとかじゃねーよ。怒られてるの。わかる?」


藤村 「だからそのターンは終わって、クイズのターンになったじゃないすか」


吉川 「なってねぇよ! 怒られのターンのままだよ」


藤村 「じゃ、このクイズなんすか? 当てたら怒られがなしになるって話じゃ?」


吉川 「なんで怒られたのかわかってないやつに怒ってもしょうがないから聞いてんだよ!」


藤村 「しょうがないんだったら怒る必要もないじゃないですか。なんで怒ってるんですか? ストレス解消? やめたほうがいいですよそういうの」


吉川 「俺が諭されてるの? ミスしたやつに」


藤村 「そうっすよ。なんで諭されてるかわかりますか?」


吉川 「え? あ。……2割くらいは」



暗転

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