素直マン

吉川 「ギャー! 助けてー!」


素直 「とうっ!」


吉川 「あ、素直マンだ!」


素直 「そのとーり! 期待を裏切らない男、素直マン。ただ今参上」


吉川 「素直マン、あの怪人を倒してくれるんだよね?」


素直 「そのとーり! 素直マンキックでイチコロだ!」


吉川 「そして、必殺技を決めるんだよね!」


素直 「そのとーり! 素直マンハリケーンでふっとばしてやる」


吉川 「かねてより噂の、新必殺技は完成したの?」


素直 「そのとーり! バッチグーの威力だぜ」


吉川 「素直マンハリケーンを超える20ギガトンの破壊力を持つと言う!」


素直 「そのとー……え? 20ギガトン?」


吉川 「さすが、素直マン!」


素直 「そ、そのとーり! いや、でも20ギガトンは……若干、厳しいかなぁなんて」


吉川 「じゃ、おまけして19ギガトンだ!」


素直 「そのとーり……。う、うん。19ギガトン出せるように頑張る」


吉川 「大変だ! 怪人の攻撃が!」


素直 「そのとーり! しかし、この身軽さで……」


吉川 「真っ向から受けてたつんだよね!」


素直 「え……。う、うん。そのとーり。受けて立つさ。グワッ!」


吉川 「さすが素直マン。まったくの無傷だ!」


素直 「そ、そのとーり! ちょっとした複雑骨折なんて無傷みたいなものさ!」


吉川 「素直マン! がんばって! 差し入れにアツアツおでんを持ってきたよ。食べてくれるよね?」


素直 「う……。なぜ、アツアツおでんを」


吉川 「素直マンの大好物なんだよね?」


素直 「そ、そのとーり。じゃぁ、いただきます。アツッ! アッツ! なにこれ、アッツ! ちょ、待って。ベローンとなる。ベローンとなっちゃう! 皮が!」


吉川 「うわぁ、男らしい食べっぷりを見せてくれるのかなぁ?」


素直 「その……と……り。えーい! むしゃむしゃむしゃー!」


吉川 「わー! 男らしい!」


素直 「ほひょほーひ!」


吉川 「ほひょほーり?」


素直 「んんんん!!! そのとーり!」


吉川 「さすが、素直マン! そんな素直マンをねぎらうために、熱湯風呂を用意したよ」


素直 「いや、ちょ、待って。なんで熱湯?」


吉川 「熱いのが好きなんだよね?」


素直 「う、うん。そのとおり……」


吉川 「それでは、はりきってどうぞ!」


素直 「う、アツッ! 熱いし! まじで熱いし! タイツが! 全身タイツがひばりついて熱さがずっと! 熱い! 死ぬ!」


吉川 「ざぶっと肩までつかっちゃうんだよね?」


素直 「う……そのと……いや、その通らないかなぁ」


吉川 「えぇ!? 通らないの? 素直マンなのに!?」


素直 「いや、頑張ります……。とう! アツッ! まじ熱い! バカか!」


吉川 「さすが素直マン、無敵のヒーローだ」


素直 「そのとーり! おでんだろうと、風呂だろうと、どんとこいだ!」


吉川 「だけど、犬にはちょっぴり弱いんだってね?」


素直 「そのとーり! ……え? そんなQちゃんみたいな設定は……」


吉川 「ワン!」


素直 「ヒー! お助けー!」


吉川 「素直マン、感動をありがとう。ところで、20万ほど貸してくれるよね?」


素直 「そのとー……え? お金?」


吉川 「そうそう。いつか返すから。嫌とは言わないよね」


素直 「そのとーり。あ、でもすみません。今持ち合わせがこれしかなくて……」


吉川 「3800円かよ。しけてるなぁ」


素直 「そのとーり! 私はしけている」


吉川 「でも、そろそろ素直マンも潮時だよなぁ」


素直 「そのと……え? 潮時?」


吉川 「今時、古いもん。こんなしょぼいヒーロー」


素直 「そのとーり……古いよね」


吉川 「まぁ、いい年なんだしさ、そろそろちゃんと身の振り方考えた方がいいと思うよ」


素直 「そのとーり。いい年なんだよ。私は」


吉川 「じゃ、そういことで」


素直 「え? 帰っちゃうの?」


吉川 「うん」


素直 「あの……お金は……」


吉川 「うるさい。黙ってろ」


素直 「そのとーり……黙ってます」



暗転

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る