娘さんを

吉川 「娘さんを僕に下さい!」


藤村 「ならん!」


吉川 「そこをなんとか!」


藤村 「娘はあげられないが、他のものなら何なりと持っていけ」


吉川 「いや、別に強盗しにきたわけじゃないので」


藤村 「では、私のありがたい話でも聞いていくか?」


吉川 「は、はぁ」


藤村 「ありがたいわりには、面白くなくてオチも中途半端だぞ」


吉川 「別に、お義父さんにそこまで要求してません」


藤村 「ありがたくないけど、めちゃくちゃ面白い話バージョンもあるぞ」


吉川 「いや、今日はそういう話をしに来たわけではなく」


藤村 「ならば帰れ! わしのありがくない話を聞かんやつに娘はやれん!」


吉川 「聞きます! 聞かせてください」


藤村 「えー。どうしよっかなぁ」


吉川 「どっちなんだ……」


藤村 「これは、わしの知り合いのお兄さんの友達が本当にあった話だ」


吉川 「のっけから信憑性がなさそうだ」


藤村 「ある時、ボーっと空を見ていると、目にゴミが入っちゃったんだけど……あ! やべ、言っちゃった」


吉川 「へ?」


藤村 「今のナシね。ノーカンね」


吉川 「は、はぁ」


藤村 「あのね、すごいでっかいUFOみたいのが、あったんだって」


吉川 「え? ゴミは?」


藤村 「うるさいっ! あー、もういい。話す気なくなっちゃった」


吉川 「えー」


藤村 「オチを先読みするとは、食えんやつよのぉ」


吉川 「別に先読みしたつもりはこれっぽっちも」


藤村 「じゃ、何でお前、オチ先に言うんだよ」


吉川 「いや、先に言ったのはお義父さんじゃ」


藤村 「お前にお義父さん呼ばわりされる覚えはない!」


吉川 「すみません」


藤村 「でも、セクハラ課長呼ばわりされる覚えはある」


吉川 「セクハラしてるのかよ」


藤村 「ちょっとだけだよ! ほんのちょっと魔がさしてつい」


吉川 「いや、別にここで反省しなくてもいいですけど」


藤村 「まぁ、そんなわけだから。今日のところはお引取りを」


吉川 「そんなこと言わずに! 娘さんを下さい!」


藤村 「お前のようなどこの馬の部位だかわからないやつに!」


吉川 「いや、確かに馬の部位ではないですけど」


藤村 「モモか! ロースか!」


吉川 「あの……馬の骨じゃ」


藤村 「やっぱり骨か! まったく食えんやつだ」



暗転

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