問題

藤村 「あるところで熊に出会いました」


吉川 「うん」


藤村 「そこから、南に10km、東に10km、北に10km行った所で、また同じ熊に出会いました」


吉川 「あー、それ知ってるわ」


藤村 「その熊はどんな熊でしょう?」


吉川 「白熊」


藤村 「これでわかるのは、あなたの理想の熊です」


吉川 「え? 心理テストなの?」


藤村 「そうだよ」


吉川 「そもそもなんだよ! 理想の熊って」


藤村 「熊にも色々あるでしょ」


吉川 「いや、それって南極だから白熊って答えでしょ?」


藤村 「別に誰も南極だなんて言ってないじゃん」


吉川 「だって、南、東、北で同じ場所ってことはさ、南極か北極でしょ?」


藤村 「お前は熊を甘く見てるな」


吉川 「別に熊に関して甘いも苦いもないけど」


藤村 「熊が西に10km移動してたらどうするんだよ」


吉川 「……そうかもしれないけど」


藤村 「月の輪熊だって西に10kmくらい移動するぜ?」


吉川 「心理テストなら心理テストってはじめから言ってよ」


藤村 「誰もクイズだなんて言ってない」


吉川 「なんだよそれ」


藤村 「じゃ、次はマッチ棒問題」


吉川 「わかった。クイズね?」


藤村 「クイズかそうでないかは、それ自体が一番の謎」


吉川 「そこを謎にしないでくれ。解き明かしてくれ」


藤村 「残念だが、今の俺の知能では無理だ」


吉川 「そんな問題出すなよ」


藤村 「とにかく、ある森でマッチ棒に出会いました」


吉川 「ちょっと待って! シチュエーションがおかしい」


藤村 「正直なマッチ棒に出会いました」


吉川 「いや、性格の問題じゃなくて、森でマッチ棒に出会わない」


藤村 「あぁ。火事になるから?」


吉川 「そうじゃないよ! それも問題かもしれないけど、マッチ棒クイズってそういうのじゃないでしょ?」


藤村 「じゃ、どういうの?」


吉川 「なんか、一本動かして式を完成させなさいとか」


藤村 「ある森でマッチ棒を一本動かして式を完成させなさい」


吉川 「いやいや、意味わからない。なんだ、ある森って」


藤村 「森がヒント」


吉川 「そうじゃなくて、式がないじゃん」


藤村 「森は四季豊かだぜぇ」


吉川 「そうじゃない。森の移り変わる様はこの際関係ない」


藤村 「わかった。こうしよう。マッチ棒が森を歩いてるとある動物に出会いました」


吉川 「だから、マッチ棒に意思がこもってるのがおかしいの」


藤村 「万物には意思が宿るんだよ」


吉川 「なんかファンタジックな解釈でうやむやにしようとしてる」


藤村 「その熊はどんな熊でしょう?」


吉川 「一問目と変わってないじゃん」


藤村 「全然違う。これは恋人にしたい熊」


吉川 「熊を恋人にしたくないよ! 剛の者じゃないんだから」


藤村 「自分ではそう思ってなくても、深層心理はそう思ってるんだよ」


吉川 「深層心理だって熊なんてごめんだ」


藤村 「まれに見る美熊だぜ」


吉川 「どんな美熊でも冬眠しちゃうような毛むくじゃらはやだ」


藤村 「だよなぁ……白熊は冬眠しないし」


吉川 「いや、白熊がいいってわけじゃなくて熊関連じゃないやつにしてよ」


藤村 「そうなると、普通のマッチ棒問題しかないよ」


吉川 「いいよそれで。大歓迎だよ。普通のマッチ棒」


藤村 「マッチ棒が川の字に並んでます」


吉川 「そう。そういうのを待っていた」


藤村 「これを一本だけ動かして台無しにしてください」


吉川 「え。言ってる意味が……」


藤村 「もう、なんていうか、台無しだよ! あぁ~あ。って雰囲気にしてください」


吉川 「それは……なにか意味があるの?」


藤村 「マッチ棒問題に意味なんてあるか!」


吉川 「そうだけどさ。なんだよ台無しって。そもそも、それに答えはあるのか?」


藤村 「答え?」


吉川 「用意してないんじゃないか!」


藤村 「答えはコレだよ。マッチに火をつける」


吉川 「……で?」


藤村 「な?」


吉川 「なんだよ! たしかに台無しだよ。でもそんなの問題じゃない」


藤村 「俺が作った問題なんだから、コレが答えだ」


吉川 「なんだか……煙にまかれた気分」



暗転

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