死神
吉川 「じゃ、本当に死神?」
死神 「そうだって言ってるじゃん」
吉川 「うわぁ。まじかよぉ」
死神 「まじだよ」
吉川 「俺、死ぬんだ?」
死神 「え? なんで?」
吉川 「なんでって……連れに来たんでしょ?」
死神 「どこに?」
吉川 「どこって……地獄とか、天国とか」
死神 「行きたいの?」
吉川 「行きたいわけないじゃん! 生きたいよ」
死神 「どっちだよ」
吉川 「いや、生きたい。生き抜きたい」
死神 「じゃ、生きればいいじゃん」
吉川 「え? いいの?」
死神 「いいも悪いも、そんなの自分で決めるもんでしょ」
吉川 「あの……死神だよね?」
死神 「だから、そうだっつってるじゃん。あんまりしつこいとキレるよ?」
吉川 「いや、ごめん。ちょっと思ってた印象と違ったから」
死神 「どんな印象だったの? アングロサクソン系かと思ってた?」
吉川 「いや、人種じゃなくて、なんというか、もっと殺伐として人を地獄に連れて行くような」
死神 「そんなことしないって。俺、ただの死神だもん」
吉川 「死神の時点で十分ただものじゃないと思うけど」
死神 「あぁ、結構死んで間もないからな」
吉川 「死んじゃってるの?」
死神 「だから、死神だって言ってるだろ」
吉川 「え? ひょっとして、死神って……死んだ神?」
死神 「そうだよ。しつこいなぁ。あんまりしつこいとキレるよ?」
吉川 「ごめん。神様だったんだ」
死神 「なんだよいまさら、様つけかよ。気持ち悪いよ。タメ口でいいよ」
吉川 「わぁ、ずいぶんフランクな神様だ」
死神 「どうせもう死んでるしね」
吉川 「神様って死ぬんだ……」
死神 「そりゃ、神様だってナメック星人なわけじゃないからね」
吉川 「ナメック星人も死ぬけどね」
死神 「神なんて、結構すぐ死ぬよ」
吉川 「そうなんだ。で、何で死んだの?」
死神 「う~ん、多分、ガンか食あたり」
吉川 「いや、幅広いよ。どっちだよ」
死神 「ガンっぽい食あたりだよ。すごい強力なやつ」
吉川 「食あたりで死んだんだ」
死神 「ほら、この時期、色々腐りやすいでしょ?」
吉川 「神様弱いね」
死神 「違うよ。本気出せば治ったんだけど。油断して死んだ」
吉川 「油断すると死ぬんだ」
死神 「お前、食あたりなめてるとやばいぞ」
吉川 「いや、別になめてないけど」
死神 「まじ勘弁だよ。もう、二度とあんな思いはしたくないね」
吉川 「なに食べたの?」
死神 「たぶん、味噌汁」
吉川 「あー、味噌汁は腐りやすいよ」
死神 「でしょ? なんか表面に膜みたいのできてたもん」
吉川 「そんなもん食うなよ」
死神 「湯葉かなぁ、と思って油断した」
吉川 「そんな極端な油断は普通しない」
死神 「湯葉じゃないんだもん、ビックリだよ」
吉川 「それは、ビックリだよなぁ」
死神 「ポンポン痛くなっちゃうし」
吉川 「それで死んだんだ」
死神 「死んじゃったね」
吉川 「病院とか行かなかったの?」
死神 「だって、恥ずかしいじゃん。食あたりとか」
吉川 「そりゃ、確かに恥ずかしい」
死神 「なに食べたの? とか聞かれるんだよ」
吉川 「腐った味噌汁とは言いにくいなぁ」
死神 「でしょでしょ?」
吉川 「普通、食べないもん。どんだけ意地汚いんだよ」
死神 「だからね、俺の死因はたぶん不明のまま」
吉川 「そうなんだ」
死神 「神のみぞしる」
暗転
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