キャッチコピー

吉川 「すげぇよなぁ」


藤村 「なにが?」


吉川 「おいしいヘルシー」


藤村 「は?」


吉川 「おいしいヘルシー」


藤村 「そ、それがなにか?」


吉川 「すごいと思わない? おいしい上にヘルシーなんだよ? しかもシーで韻を踏んでる」


藤村 「まぁ、そうだね」


吉川 「キャッチーな上に情報満載。まさにキャッチコピーの鏡だよ」


藤村 「そ、そうかなぁ」


吉川 「俺らもウカウカしてられないね」


藤村 「いや、別に俺はウカウカしてるつもりはないんだけど……」


吉川 「おいしいヘルシーに負けないキャッチコピーを考えようぜ」


藤村 「え? 突然なんの?」


吉川 「なんのとかそう言う細かいことはどうでもいいんだよ」


藤村 「いやいや、キャッチコピーってなにかのものでしょ?」


吉川 「今俺たちに必要なのはキャッチコピーを作るというレクリエーションなんだよ。なんのとか、そんなことはあとからついてくる」


藤村 「なんか無茶苦茶だよ」


吉川 「よし、考えるぞ」


藤村 「考えるったって……なにを?」


吉川 「だからキャッチコピーだよ」


藤村 「そんなの無理だって。だったら自分から言ってよ」


吉川 「え……」


藤村 「そんなこというなら自分から何か発表してくれ」


吉川 「俺のは……まだその時じゃないから」


藤村 「何で機を見る必要があるんだ」


吉川 「初めてだから恥ずかしい」


藤村 「そんなの俺だってはじめてだ」


吉川 「わかった。じゃ、言うよ」


藤村 「うん」


吉川 「おいしいチェルシー」


藤村 「……」


吉川 「これはチェルシーのキャッチコピーで……」


藤村 「言わなくたってわかるよ」


吉川 「な? 物はあとからついてきただろ?」


藤村 「そうじゃないだろ! そんなの盗作とかですらない。なんだそれはゴミクズ以下だ」


吉川 「ひどい言われよう」


藤村 「だからキャッチコピーを作ること自体に意味を感じられないんだよ」


吉川 「わかった。こうしよう。おいしいもののキャッチコピー」


藤村 「いったいなにがわかってそうなっちゃうんだ」


吉川 「おいしいの後に続く素敵なキャッチコピーを新開発しよう」


藤村 「おいしいジューシーとか?」


吉川 「おっ! いいのが出た! いいねぇ。なんかだし汁のコピーにしたい」


藤村 「だし汁かよ。もっとステーキとかそういうものにしてくれよ」


吉川 「なんだかんだ言ってお前ってセンスあるよな」


藤村 「このくらい誰だって思いつく」


吉川 「俺はチェルシーが限界だ」


藤村 「限界低いなぁ」


吉川 「あ、こういうのはどうだろ?」


藤村 「どんなの?」


吉川 「おいしいわずらわしい」


藤村 「それはいったいなんのコピーに使えるんだ」


吉川 「え~とね、あのちっちゃい袋にパックされてるやつで、こちら側のどこからでも開きます。って書いてあるのに全然切り込みがはいらないの! もう、どこからも開かねーじゃねーか! ってイライラってなるやつ」


藤村 「そんなもん、おいしくたっていらない」


吉川 「あぁ……。まぁ、いらないな」


藤村 「そうじゃないだろ。おいしさと相乗効果のあるやつじゃないと」


吉川 「おいしいファンタジー」


藤村 「なんだそれは」


吉川 「おいしいのかなぁ……って思ったら実は何も食べてないの。まやかしだった」


藤村 「そりゃ確かにファンタジーだけど、それがどうかしたのか?」


吉川 「い、いや……どうもしない」


藤村 「うん。そうだろ」


吉川 「おいしいかまびすしい」


藤村 「なんだそれは? どんな意味だ」


吉川 「いや、意味とかよくわからないんだけど、かまびすが入ってる」


藤村 「なんだよ、かまびすって?」


吉川 「……かまぼこの一種じゃね?」


藤村 「絶対違う」


吉川 「お前、いちいちなんだよ! 人の感動的なキャッチコピーの数々にケチをつけるなよ」


藤村 「なに、どさくさにまぎれて聞き捨てならないことを言ってるんだ」


吉川 「お前はおいしいやかましいだ!」


藤村 「俺は別においしくない!」


吉川 「じゃ、まずいやかましい!」


藤村 「もう、かけてすらない」


吉川 「略してまずやかま!」


藤村 「略されちゃってるし意味もよくわからなくなっちゃってる」


吉川 「そして俺はやさしいたくましい」


藤村 「嘘だしあつかましい」



暗転

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