アンドロイド
博士 「今日からお前は、アンドロイド吉川くん一号じゃ」
吉川 「イエッサ! 博士」
博士 「正義のために、悪と戦うんじゃ」
吉川 「博士?」
博士 「なんじゃ? 吉川くん一号」
吉川 「悪って言うのは具体的になんですか?」
博士 「いい質問じゃ。吉川くん一号。それでこそわしの作ったアンドロイド」
吉川 「サンキューサー! 博士」
博士 「悪というのはな、煮込み料理をしたときに出てきちゃう、なんかドロドロのブクブクじゃ」
吉川 「イエッサ! 博士」
博士 「ちがーう! それは灰汁! ブクブクはアクじゃ」
吉川 「アクサー!」
博士 「今のはな、ジョークじゃ。しかも飛び切り高度な」
吉川 「なるほどサー」
博士 「そういうボケに対してはな、ツッコミじゃ! それはアクでんがな! とツッコむんじゃ」
吉川 「イエッサ! 博士。ツッコミます。メガトン……」
博士 「ストップ! 吉川くん一号ストップ!」
吉川 「ストップサー!」
博士 「メガトンでつっこんだら博士死んじゃう」
吉川 「イエッサ! 博士」
博士 「もうちょっと、こころもち優しくつっこむんじゃ」
吉川 「イエッサ! 博士。超放射線ビー……」
博士 「ストップ! 吉川くん一号ストップ」
吉川 「ストップサー!」
博士 「ビームしたら博士死んじゃう」
吉川 「死んじゃうサー!」
博士 「その辺りの手心というのは説明が難しいじゃが」
吉川 「説明サー!」
博士 「ツッコミはできれば死なないレベルで」
吉川 「レベルでサー!」
博士 「結局、ツッコミも悪も人の心が決め手になるんじゃ」
吉川 「人の……心?」
博士 「そう。人としての優しさ、それがあればおのずと答えはわかってくる」
吉川 「わかってくるサー!」
博士 「要するに、悪とは、悪いこと」
吉川 「悪いこと?」
博士 「悪いこととは、よくない行いのことだな」
吉川 「よくない行い?」
博士 「つまり、人を傷つけたり、地球を傷つけたり、主に傷つけ関係に多く含まれる」
吉川 「イエッサ! 博士」
博士 「そういう悪いことをしてるやつにはだな、正義の鉄拳じゃ」
吉川 「でも、それでは私がその人を傷つけてしまいます」
博士 「いいところに気がついた! さすが吉川くん一号」
吉川 「イエッサ! 博士」
博士 「つまり、それが人の心。優しさと言うものじゃ」
吉川 「優しサー!」
博士 「そう。優しい心で悪を正す。愛の鞭とも言う」
吉川 「鞭で攻撃?」
博士 「違う。武器じゃない。正しい方向へ人を導くこと、これはとてもいいことだ」
吉川 「鞭で」
博士 「別に無理に鞭で導かなくていい」
吉川 「イエッサ! 博士」
博士 「だから間違ったことをしてる人を見たら、まず間違っていることを教える」
吉川 「鞭で?」
博士 「やけに鞭に固執するな。そうじゃない、まずは言葉でだ」
吉川 「言葉サー!」
博士 「それでも聞かない悪は遠慮なく鉄拳制裁じゃ」
吉川 「鞭で」
博士 「いや、もう、鞭でいいや」
吉川 「イエッサ! 博士」
博士 「さぁ、吉川くん一号。正義のために戦うのじゃ」
吉川 「戦うサー!」
博士 「ゆけー!」
吉川 「博士の息、地球温暖化!」
博士 「え……」
吉川 「博士。呼吸を止めてください」
博士 「いや、そういうの無理だし、そんな限りなく身近なところから正義しなくても」
吉川 「警告します。呼吸を止めてください」
博士 「いや、えっとね、実はわし、エラ呼吸! そう、エラ呼吸でした」
吉川 「ボケ確認。ツッコミます」
博士 「いや、わしあの……」
吉川 「メガトン……」
博士 「わぁ!」
吉川 「鞭!」
博士 「わぁお! 微妙な刺激! 吉川くん一号、グッドジョブじゃ」
吉川 「これが……人の心?」
博士 「いや、ごめん。違う」
暗転
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