透明

博士 「おっさんが履いてる靴下あるよね?」


吉川 「あの薄くて地肌が透けて見えるやつ?」


博士 「そうそう半透明の」


吉川 「おっさん履いてますね」


博士 「あれをワシなりの独自の理論に基いてスタイリッシュに変身させてみた」


吉川 「博士なりの理論に基いちゃった時点で失敗が垣間見えますね」


博士 「これじゃ!」


吉川 「これって、履いてないじゃないですか?」


博士 「履いてないように見えるじゃろ。じゃがしかし、さわってみ」


吉川 「あっ! 布地だ! 薄い布地の感触」


博士 「なんと半透明を通り越して透明にしました!」


吉川 「それはすごい!」


博士 「格好いいじゃろ」


吉川 「いや、見えてないから格好いいかどうかの判断はまるでつかないけど」


博士 「しかもじゃ! その理論を応用してステップアップしてみた」


吉川 「透明のモモヒキ?」


博士 「惜しい! なんと透明の靴!」


吉川 「あっ!? 本当だ。履いてる! 見えないけど靴の感触」


博士 「しかもエアー」


吉川 「まぁ、透明だからエアーっぽいっていえばエアーっぽい」


博士 「格好いいじゃろ?」


吉川 「だから見えないんだって」


博士 「この辺のラインが若者を意識してみた」


吉川 「意識されちゃったんだ。若者が」


博士 「どう?」


吉川 「これはすごいです。靴に使うというのはアレだけど技術自体はすごい!」


博士 「じゃろ? すごいんじゃよ、これを応用して服を作れば、バカじゃなくても見えない服ができる!」


吉川 「すごい! 絶対着たくないけど!」


博士 「もう、裸は王様だけに許された特権ではない!」


吉川 「別に王様だって裸なわけじゃないです」


博士 「我々も裸だ!」


吉川 「その我々に私も含まれているんだろうか」


博士 「実はすでに一部とりかかってる」


吉川 「なんと!」


博士 「ジャジャーン!」


吉川 「いや、勢いよく出されたけど透明だからなんだかリアクションできない」


博士 「これじゃ!」


吉川 「だからどれです?」


博士 「腕時計!」


吉川 「おぉ!」


博士 「しかも生活防水」


吉川 「あんまり必要のない機能を重視するなぁ」


博士 「これは若者には必須アイテムとなるぞ!」


吉川 「ところで博士、今何時です?」


博士 「う~んと、ちょっとわかんないな」



暗転

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