エクソシスト

藤村 「あなたが?」


吉川 「そう。悪霊払いです」


藤村 「あの有名な」


吉川 「英語で言うとエクスタシー」


藤村 「エクソシストじゃ」


吉川 「そう。そのエクスタシストです」


藤村 「気持ちよさそうな職業だなぁ」


吉川 「あなたは悪魔に魅入られてる!」


藤村 「なんですか、やぶから棒に」


吉川 「あなた、最近、微熱がないですか?」


藤村 「あー、あるかもしれません」


吉川 「頭がボーっとする」


藤村 「します」


吉川 「鼻がグズグズしてくしゃみが止まらない」


藤村 「花粉症ですから」


吉川 「それが悪魔だ!」


藤村 「いや、花粉です」


吉川 「花粉というのは悪魔の一種です」


藤村 「えー、そんな無理やりな」


吉川 「ヒスタミンという低級悪魔が鼻の粘膜を刺激して起こる」


藤村 「CMで言ってるまんまだ」


吉川 「これを抑えるには悪魔払いの儀式をするしかありません」


藤村 「いや、花粉症だから。払ってもらっても」


吉川 「花粉症じゃない! 悪魔だ!」


藤村 「医者にもアレルギー反応が出てるって」


吉川 「医者の言うこととエロシストの私の言うこととどっちを聞く気だ!」


藤村 「いや、エロシストの言うことなんかできれば聞きたくない」


吉川 「その強情なところも悪魔の仕業です」


藤村 「いや、私の意思ですけど」


吉川 「知らない間に悪魔にそういう選択をするように仕向けられてるのです」


藤村 「誰だってそう言うと思うけど」


吉川 「いいから。私に任せておけば悪魔はすんなり出ていくし一日30分のエクササイズでみるみるうちに素敵な腹筋ができあがる」


藤村 「別に腹筋はいらないです」


吉川 「モテるぞぉ。今、原宿では腹筋が大ブームだからね」


藤村 「そんな気色悪い大ブームなんて乗りたくない」


吉川 「あと、いま悪魔払いされた方にはなんと30ポイント進呈」


藤村 「そのポイントはなんに使えるんだ」


吉川 「40ポイントでデーモン閣下のサイン入り御札ステッカーと交換」


藤村 「ダメじゃん。デーモン閣下は悪魔の側じゃん」


吉川 「50ポイントでリトル松井のサイン入りボール」


藤村 「もう悪魔とか関係ないんだ」


吉川 「60ポイントで夢のハワイ旅行に行きたいな!」


藤村 「願望か。行きたいだけか」


吉川 「どう? 心が揺れ動いたでしょ」


藤村 「いや、全然」


吉川 「ほら! それが証拠。悪魔に魅入られてる動かぬ証拠」


藤村 「誰だってやだよ。そんなインチキ臭い」


吉川 「インチキかどうかやってみればいいじゃん」


藤村 「だって悪魔なんていないもん」


吉川 「はじめはみんなそういうの。でも、やってみれば考え変わるから。今じゃ全国に8億人のリピーターがいるんだから」


藤村 「多い! 日本の人口そんなにいないのに。明らかに嘘だ」


吉川 「痛いのは最初だけ」


藤村 「痛いんだ」


吉川 「ほんの最初の60年間つらいだけだから、そのあとすっごく楽になる」


藤村 「60年もか。責め苦じゃないか」


吉川 「いいから。もう勝手にはじめちゃうよ」


藤村 「いや、待ってよ! やだよ!」


吉川 「でぇ~い! 悪霊退散!」


藤村 「ピギャー!」


吉川 「よし。悪霊は確かに出ていった」


藤村 「いや、まだ鼻がグズグズするんですけど」


吉川 「ふぅ、おかげでだいぶ楽になったよ」


藤村 「お前が魅入られてたのか」



暗転

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