ひな祭り

良子 「吉川くん、今日は何の日だか知ってる?」


吉川 「三月三日だから耳の日だろ?」


良子 「んもう! 違うよ! もっと肝心なのがあるじゃん」


吉川 「あぁ」


良子 「明かりをつけましょジョンジョロリン♪」


吉川 「なんか後半がアホの坂田みたいになってるけど」


良子 「今日は桃の節句○だよ!」


吉川 「なんだその意味不明な伏字は。何を入れるつもりだったんだ」


良子 「そんな細かいこといいでしょ! このエロ原人!」


吉川 「自分から言い出したくせに……」


良子 「良子おひなさまが欲しいなぁ」


吉川 「ドラえもんじゃないんだから、そんなにホイホイ簡単に出せないよ」


良子 「じゃぁ買ってよぉ!」


吉川 「そんな簡単に買えるか」


良子 「ドラえもん買ってよぉ!」


吉川 「ドラえもんをか! 目的変わっちゃってる。そんなもん俺が欲しいよ」


良子 「お互いの利害が一致したと言うことで」


吉川 「一致したところでドラえもんは買えない」


良子 「ケチンボ! 吉川くんの○チンボ!」


吉川 「なんでいちいち伏字なんだ」


良子 「おひなさまかドラえもんが欲しいよぉ!」


吉川 「ドラえもんは無理だけどおひなさまなら」


良子 「なにそれ? マジックスクエア?」


吉川 「いや、ただの折り紙ですけど」


良子 「素敵!」


吉川 「そ、そう?」


良子 「それで傷ついた良子に千羽鶴を折ってくれるのね!」


吉川 「いや、千羽も折らないよ。なんでそんな過酷な挑戦をしなきゃいけないんだ」


良子 「何羽鶴?」


吉川 「鶴関係ないから。ほら、おひなさま」


良子 「わぁ! すっごい子供だまし!」


吉川 「……もうちょっとオブラートに包めよ」


良子 「このおひなさまが吉川くんの精一杯の愛情表現なわけね? 吉川くんの愛はこんな紙くず程度だと!」


吉川 「いやな言い方するなぁ。わかったよ。もうちょっと何とか考えるよ」


良子 「じゃさ、自分たちで雛様になろうよ」


吉川 「えー。そういうのって、いい大人はやらないものじゃん」


良子 「なに? 照れてるの?」


吉川 「そりゃ照れるよ。いい年こいて」


良子 「良子がおひなさまやるから、吉川くんは左大臣ね」


吉川 「え。なんで俺だけしょっぱなから爺さんなの?」


良子 「牛がいい? 牛車の」


吉川 「いや、普通お内裏様じゃない?」


良子 「思い上がるのもいい加減におし!」


吉川 「急にお高く止まりだした」


良子 「おひなさまだからね」


吉川 「たぶんそういうキャラじゃないと思うけど……」


良子 「ほれ、いい男をみつくろっておいで」


吉川 「逆ハーレムを築くつもりだ」


良子 「早くおしよ! この豚!」


吉川 「これでも左大臣のはずなのに……」


良子 「早くしないと菱餅の角っこで刺すよ!」


吉川 「そんな鋭くないだろ」


良子 「甘酒のボトル入れるから五人囃子のコールを!」


吉川 「ホストクラブのダメな企画みたいになってきた」


良子 「吉川くん! 早くいい男を連れてきなさいよぉ!」


吉川 「はいはい、行ってもどうせ誰もつれて来れないと思うけど」


良子 「釣れるまで帰ってきちゃダメだよ!」


吉川 「暇な釣りになりそうだな……」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る