本当にあった怖い話

藤村 「本当にあった怖い話見た?」


吉川 「見た見た。怖かったぁ」


藤村 「やっぱ本当にあったってのが怖いんだよね」


吉川 「あー。リアリティか」


藤村 「ね、俺のも聞いて。本当にあった話」


吉川 「なにそれ!? そんな体験談あるの?」


藤村 「俺さ、肉屋でバイトしてるじゃん?」


吉川 「あー。なんだっけ? 変な名前の」


藤村 「ジャンボ精肉店」


吉川 「あー。そうだ。そんな名前だ」


藤村 「そこの店長がさぁ。何でかしらないけど俺のことジャンボって呼ぶんだよね」


吉川 「へぇ」


藤村 「どちらかっていうと自分がジャンボじゃん?」


吉川 「なんで? でかいの?」


藤村 「いや、自分がジャンボ精肉店の店長なんだからさ。俺ただのバイトだもん」


吉川 「あぁ」


藤村 「変なんだよ」


吉川 「フーン」


藤村 「……」


吉川 「……」


藤村 「……」


吉川 「……え? 終わり!?」


藤村 「うん」


吉川 「なにそれ!? 全然怖くない」


藤村 「別に怖い話じゃないもん」


吉川 「えー。だって」


藤村 「これは本当にあった別にオチとかも特になくフーンくらいのリアクションしかとれないような話」


吉川 「そんな話か。まんまとフーンとしか言えなかったよ」


藤村 「だろ? 本当にあったんだよ」


吉川 「いや、別に本当でもどうでもいい」


藤村 「リアルだろ?」


吉川 「リアルだけどさぁ……。それだけじゃん」


藤村 「うん。それだけ」


吉川 「もっとなんか違うじゃん。肝心な部分が」


藤村 「あー。そういうことか。じゃとっておきのやつ」


吉川 「待って。ちゃんと怖いの?」


藤村 「うん。本当にあった友達の兄貴の知り合いの取引先の久保田さんの友達が怖い目にあった話」


吉川 「それ嘘だよ。それだけ遠かったら本当じゃないよ」


藤村 「本当だって言ってたぜ?」


吉川 「いや、遠すぎて本当とか嘘とかの手前でなんか届いてこないよ」


藤村 「じゃ、本当にあったかどうかもちょっと疑わしい話」


吉川 「それはもう間違いなく嘘だね」


藤村 「嘘かどうかはわからないけど、ちょっと疑わしい話」


吉川 「そういうのじゃなくてさ、なんかもうちょっとあるじゃん?」


藤村 「難しいな。本当にあった怖い話は」


吉川 「そうでもないだろ」


藤村 「こういうのはどうだろ?」


吉川 「本当にあった怖い話?」


藤村 「うん。あのね……北朝鮮じゃ核爆弾作ってるらしいよ」


吉川 「いや、それは本当で怖いけどさ。たしかに条件満たしてるけど」


藤村 「こえー」


吉川 「いやいや、ちょっと漠然としすぎて怖がれないなぁ」


藤村 「本当だぜ?」


吉川 「わかってるけど。怖さの質が違うじゃん。なんか個人的に怖がれない内容じゃん」


藤村 「注文多いな」


吉川 「もっと身の丈にあった怖い話がいい」


藤村 「わかった。じゃ、俺の話」


吉川 「怖いの?」


藤村 「怖い怖い。今思い出しても腹がよじれる」


吉川 「それは怖いリアクションじゃないな」


藤村 「これはね、俺が実際に体験した作り話なんだけど……」


吉川 「ダウト!」


藤村 「どうしてわかったの?」



暗転

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