手品

吉川 「新しいマジックを開発したんだよ」


藤村 「マジックって手品?」


吉川 「そうそう」


藤村 「そんなの急に開発しちゃうもんなんだ」


吉川 「俺の才能が暴走した結果だ」


藤村 「暴走させたのか」


吉川 「イリュー吉川の超マジック」


藤村 「いや、ジョンは人名じゃないぞ」


吉川 「まず消失系マジックから」


藤村 「じゃ、このテレビを消して」


吉川 「そんなの自分で消せよ」


藤村 「いや、電源じゃなくて。それなら俺でもできるし手品じゃない」


吉川 「そういうことか。何で突然命令されたのかと思った」


藤村 「話の流れからわかるだろ。スイッチだと思う方がおかしい」


吉川 「あー。テレビとかは無理だな。電気関係だし」


藤村 「電気関係はダメなのか」


吉川 「しびれちゃうからね」


藤村 「どういう消し方するつもりなんだ」


吉川 「それは消えてみてのお楽しみだよ」


藤村 「じゃ、このCDを」


吉川 「CDは無理。なんかはじっこで手とか切りそうだから」


藤村 「切らないよ。CDで手を切った人とか聞いたことないよ」


吉川 「危ない! 怖いからこっちむけないで!」


藤村 「なんで恐れてるんだ。未開人か」


吉川 「CD以外ならたいがいOK」


藤村 「じゃ、このグラスを」


吉川 「グラスだけはダメ。透明だから」


藤村 「なんだよそれ。どんな理由だよ」


吉川 「透明だからどこにあるかわからなくなっちゃう」


藤村 「いや、わかるだろ。え? なに? グラサン? グラサンかけた人?」


吉川 「グラス以外だったら結構いける」


藤村 「じゃ、この鉛筆」


吉川 「鉛筆無理! 刺さってなんか黒く人工ホクロみたいのできちゃう」


藤村 「刺さなきゃいーじゃん」


吉川 「何かの拍子に良く刺さる」


藤村 「刺さらないよ。なんだよ、結局どれでもダメなんじゃないか」


吉川 「そんなこと言うならもうやりませんー!」


藤村 「どうせできないくせに」


吉川 「あ~あ、すごいいっぱい消せたのに。でももうやらないー!」


藤村 「なんですねちゃってるんだ」


吉川 「あのテーブルとかなら余裕だったのに」


藤村 「じゃ、消してよ」


吉川 「嫌ですー!」


藤村 「なんだよ自分から言い出したくせに。結局何も消さないんじゃないか」


吉川 「パパ~ン♪」


藤村 「なに?」


吉川 「どう?」


藤村 「なにが?」


吉川 「見事消えました」


藤村 「消えてないじゃん。テーブルそこにあるよ」


吉川 「いや、俺のやる気が!」


藤村 「つっこむ気も消えたよ……」



暗転

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