想像

吉川 「だからね、想像してみてよ?」


藤村 「わかった」


吉川 「ものすんごく大きな岩があるのね」


藤村 「どのくらい?」


吉川 「どのくらいって……もんのすんごくだよ」


藤村 「母の愛くらい?」


吉川 「いや、それは概念じゃん。お前の匙加減一つじゃん」


藤村 「でかいよぉ」


吉川 「そうかもしれないけど。もっと具体的にでかいのね」


藤村 「ロシアくらい?」


吉川 「それはもう岩じゃなくて惑星だな。でかいんだけど、ほどほどにでかい。俺たちの想像できるでかさ」


藤村 「う~ん、三百人の男がやっと抱えられるくらいのでかさ?」


吉川 「三百人もただ岩を抱えるためだけに集合しないと思うけど、まぁいいや、それくらい」


藤村 「おぉ! でかいな」


吉川 「その大岩が突然坂道を転がってきた!」


藤村 「大変だ!」


吉川 「しかも、お前めがけてものすごい勢いで!」


藤村 「そんなときこそ、三百人の男たちが力を合わせて、そ~れ!」


吉川 「いや、三百人の男たちはいないから。それはお前が勝手に集合させただけでしょ?」


藤村 「あぁ……もう、帰ったあとか」


吉川 「うん、面倒くさいからそれでいいや」


藤村 「大変だぁ! よし! それじゃ、坂に溝を掘って軌道を変えて」


吉川 「もう無理なの。すごい早く転がってきてるの!」


藤村 「なんだって!? じゃぁ、かねてから発明しておいた超電磁バズーカで粉々に!」


吉川 「ないから! かねてから発明してないだろ! 都合よくアイテムを出すな」


藤村 「そうだった。まだ開発途中だったんだ」


吉川 「作ってはいるのか……」


藤村 「それじゃ、えーと。そうだ! 風! 逆風で岩の勢いを止めて」


吉川 「そんな豪風どこから来るんだよ」


藤村 「古来より神風と言うものがあり、古くは諸葛孔明が赤壁の戦いで……」


吉川 「ない! 吹かない。風とか吹かないの。すっごい勢いで転がってるの!」


藤村 「よぉし、それならダイダラボッチど~ん、出番じゃぞ~」


吉川 「そんな都合よくボッチはこない!」


藤村 「よ~ん~だ~か~い?」


吉川 「お前じゃん。お前のバリトンボイスじゃん」


藤村 「バリバリバリ、むくむくむくむく……」


吉川 「巨大化するな! 服を破って巨大化しない!」


藤村 「い~け~ねぇ! は~だ~か~だぁ。よ~い~しょ」


吉川 「履くな! ドーム球場を裏返して履くな!」


藤村 「ゴ~ワ~ゴ~ワ~す~るぅ」


吉川 「いいから。普通に考えろ! 巨大化もしないし、ドームも履かない」


藤村 「じゃ、どうすりゃいいんだよ? 見て見ぬ振りか?」


吉川 「いや、見ぬ振りはマズイだろ。見なくてもつぶされることには変わりない」


藤村 「あぁ。もうダメだぁ! 誰か助けてー!」


吉川 「そんなときに、この保険に入っておけば大丈夫」


藤村 「へぇ~。この中に三百人の男が……」


吉川 「はいってないぞ!」



暗転

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