教授

教授  「ついに発見じゃ!」


吉川  「こ、これが……」


教授  「そう。開かずの扉じゃ」


吉川  「いやぁ、ここまで来るのはまさに苦難の連続でしたね」


教授  「しかし、この発見により全ては報われる」


吉川  「で、どうします?」


教授  「なにが?」


吉川  「いや、発見して……どうします?」


教授  「とりあえず、サインしとこう」


吉川  「いや、考古学的価値があるんじゃないですか?」


教授  「記念記念」


吉川  「記念て、卒業生じゃないんだから」


教授  「教授と吉川……と」


吉川  「ちょっと! なに俺の名前まで! ネットで炎上しちゃう」


教授  「あ、自分で書きたかった?」


吉川  「いや、そういう問題じゃないいでしょ」


教授  「相合傘にしちゃった。うふ」


吉川  「うふじゃないよ! 気持ち悪い! やめてよ」


教授  「ここに相合傘を書くと一生二人きりですごせる」


吉川  「勝手な伝説作らないでよ! だいたい、こんな危険な場所に恋人同士で来ない」


教授  「さて、帰るか」


吉川  「帰るのッ!? サインだけして?」


教授  「あ、写真?」


吉川  「そうじゃなくてさ、開けないの?」


教授  「え?」


吉川  「えじゃなくて。せっかく来たのに開けないの?」


教授  「だって、開かずの扉だよ? 開くわけないじゃん」


吉川  「いやいや、そうだけどさ。なんか策とかあるんじゃないの?」


教授  「ないよ。驚くほど手ぶらだもん」


吉川  「手ぶらかよ。なんで俺だけこんな荷物持ってるんだ」


教授  「まぁ、そんなに言うなら開けない事もないけどさぁ」


吉川  「なんで渋っちゃってるんだ。探究心とか皆無じゃないか」


教授  「そうだなぁ。なんかヘアピンとかある?」


吉川  「えー! そういうので開けられるんだ。意外!」


教授  「こう見えてもね、若い頃は結構無茶したもんだよ」


吉川  「へ、へぇ……」


教授  「なんど地球の危機を救ったことか」


吉川  「おい! 明らかに嘘だろ」


教授  「色々盗んだよ。心とか」


吉川  「ルパンだ!」


教授  「おじいちゃんのペースメーカーとか」


吉川  「本当に心じゃん! ダメだよ、そんなの盗んじゃ」


教授  「殺し以外はなんでもやったさ……」


吉川  「殺しちゃってる! おじいちゃん死んでる!」


教授  「ところで、ヘアピンある?」


吉川  「あぁ、これでいいですかね?」


教授  「上等上等。ちょっと待ってね」


吉川  「そんなので鍵開けるの初めて見ますよ」


教授  「はぁ~、前髪うざかった」


吉川  「そのまんまじゃん! ヘアピンとして使っとる!」


教授  「そりゃ使うよ。ヘアピンだもん」


吉川  「そうじゃなくてさ、鍵をチョイチョイってやるんじゃないの?」


教授  「そんな泥棒みたいな真似ができるか!」


吉川  「さっき、悪さ自慢してたくせに……」


教授  「これ、ロッカーの鍵とかで開かないかな」


吉川  「開かないでしょ。なんか鍵穴複雑だもん」


教授  「諦めるか」


吉川  「えー! さっきからなに? 結構どうでもいい感じ?」


教授  「まぁ、ぶっちゃけ」


吉川  「まじかよ! 今まで苦労したじゃん」


教授  「なんか実物見たら冷めちゃった」


吉川  「冷めないでよ! 学術的好奇心は?」


教授  「んもう、吉川くんは妙に熱血だから困る。そういうところ意外とひくよね」


吉川  「いや、ひくとか言わないでよ。地味にショック」


教授  「しょうがない。最後の手段だ」


吉川  「あるんだ? 最後の手段が」


教授  「アバカム!」


吉川  「呪文!? しかもドラクエ?」


教授  「多分成功」


吉川  「うそーん。言っただけじゃん」


教授  「あ、開いてる」


吉川  「まじで!? なんで開くの? 呪文なの?」


教授  「いや、たぶん鍵かかってなかったんじゃない?」


吉川  「えー! 開かずの扉なのに」


教授  「意外だね。よぉし。開けるぞ」


吉川  「釈然としないなぁ……」


教授  「しずかちゃんの家のお風呂!」


吉川  「いや、どこでも行かないから! そういうドアじゃないから」


教授  「あ、なんか意外と中広いよ?」


吉川  「本当だ。ほら、何か書いてありますよ」


教授  「やっべー。なんか大発見っぽいね」


吉川  「扉の前で願いを言えば一つだけ叶いますだって」


教授  「……吉川くん?」


吉川  「教授! すごいですよ!」


教授  「吉川くん。ちょっと……」


吉川  「なんですか! すごいですよ!」


教授  「なんかね、開かなくなっちゃった」


吉川  「え!? 扉?」


教授  「うん。参ったね」


吉川  「参ったじゃなくて閉じ込められちゃってるじゃないですか!」


教授  「アバカムも効かないっぽい」


吉川  「それはしょっぱなから効いてないですよ! でもほら、願い事あるじゃないですか」


教授  「うん……叶っちゃったみたい」


吉川  「え? 何か言ったの?」


教授  「一生二人きりですごせるって……」


吉川  「あー」



暗転



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