母さん助けて詐欺

吉川 「もしもし? オレオレ……」


祖父 「だれだれ?」


吉川 「オレオレ……」


祖父 「あぁ! オ……」


吉川 「そうそう!」


祖父 「織田信長!」


吉川 「違う! 全然違う。織田信長じゃない」


祖父 「ヒント! ヒント!」


吉川 「ヒントって……あの、若いです」


祖父 「若い頃の織田信長!」


吉川 「違う! なんで織田信長にこだわってるんだ。知り合い?」


祖父 「知り合いって言うか、武将?」


吉川 「歴史上じゃん。普通電話かけてこないでしょ」


祖父 「そっかー! うっかりした」


吉川 「いや、うっかりで間違えないでしょ」


祖父 「えーと、じゃ誰?」


吉川 「いや、俺、俺!」


祖父 「孫……」


吉川 「そうそう!」


祖父 「孫悟空!」


吉川 「違う! 孫ってそっちか」


祖父 「そうじゃ。孫悟空なら、オラオラじゃな」


吉川 「そういう問題じゃない」


祖父 「もうわからないよぉ」


吉川 「誰か思い当たってよ!」


祖父 「ス、スーザンか!?」


吉川 「違う! 外人じゃないか。しかも女性だ」


祖父 「ハロー」


吉川 「急に英語にしなくてもいい。スーザンじゃない」


祖父 「スーさん?」


吉川 「釣りバカっぽくなった」


祖父 「ヒントくれよぉ」


吉川 「おじいちゃんの身近な人です」


祖父 「えーと……おばあちゃん?」


吉川 「それならもっと早く気づけよ」


祖父 「おばあちゃんは、去年死んだんじゃった……」


吉川 「それは……」


祖父 「どうせ、わしも……」


吉川 「そんな寂しいこと言わないで!」


祖父 「ここ一週間くらい、みんなワシを無視するんじゃ」


吉川 「ほら! 元気出して」


祖父 「君だけじゃよ。わしの相手をしてくれたのは……」


吉川 「そんなことないって」


祖父 「君には、お礼をせんとな」


吉川 「いや、あの……まぁ、それが目的なんですけど」


祖父 「形見だと思って、ワシのヘソの緒とか」


吉川 「そんなものはいらない。えらい年代モノじゃないか」


祖父 「若いものの趣味がわからんから……」


吉川 「だからといってヘソの緒はないだろ。老若男女、誰も喜ばない」


祖父 「何が欲しいんじゃ? ガンプラ?」


吉川 「いや、ガンプラとかじゃなくて……お金とか」


祖父 「プツッ……ツー……ツー……」


吉川 「あのじじい、金の話したら切りやがった!」


電話 「プルルル……」


吉川 「はい?」


電話 「あの……俺様ですか?」


吉川 「いや、そんなえらそうな人じゃないです」


電話 「おじいちゃんが世話になったって……」


吉川 「あぁ……たぶん、俺です」


電話 「お礼にガンプラをっておじいちゃんの遺書がでてきまして……」


吉川 「ガンプラ……え? 亡くなったんですか?」


電話 「えぇ。先週」



暗転

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