吉川 「むむむ……」


弟子 「先生? どうなさいました?」


吉川 「むむむむ……」


弟子 「……先生?」


吉川 「ちがーう!」


弟子 「あぁ! それは先生が二週間かけて焼いた壷!」


吉川 「これもちがーう!」


弟子 「それは、先生が三週間かけて焼いた瓶!」


吉川 「これも……っ!」


弟子 「それは、先生が一月かけて焼いたオシャレ小鉢!」


吉川 「やっぱこれはセーフ」


弟子 「セーフなんだ」


吉川 「ギリギリセーフ」


弟子 「ハァ……ギリギリで……」


吉川 「これはアウトッ!」


弟子 「や……それは……」


吉川 「ゲッツー!」


弟子 「それは……私が焼いた壷です……」


吉川 「チェンジ!」


弟子 「え? なにがチェンジ? 意味がわからない」


吉川 「心と身体がチェンジ!」


弟子 「いや……なんで急にそんな不思議体験を……」


吉川 「オレがアイツでアイツがオレで!」


弟子 「なにを言い出しちゃってるんだこの人は……」


吉川 「お前は焼き物の心がわかっておらん。だから焼き物とチェンジ!」


弟子 「え……あの……言ってることはわかるんですが……え?」


吉川 「身も心も焼き物になるのじゃ」


弟子 「はぁ……」


吉川 「わしなんか見てみぃ! 全身火傷だらけじゃ」


弟子 「え? 焼かれたの? まじで焼かれたの?」


吉川 「松崎しげるも真っ青じゃ!」


弟子 「日焼けですか。紫外線のおかげですか」


吉川 「こういうたゆまぬ努力によって焼き物の気持ちがわかってくる」


弟子 「たゆまぬって……日焼けじゃん……」


吉川 「バカボンドッ! 日焼けだけだと思うなよ!」


弟子 「バカボンドって……意味がわからない。怒られたのか?」


吉川 「最近、こう……胸がムカムカして……」


弟子 「はぁ……」


吉川 「ザッツ胸焼け! オーイエー!」


弟子 「あの……もういいですかね?」


吉川 「待って! まだあるの!」


弟子 「いや、もう十分聞きました。お腹一杯です」


吉川 「その時、ジェニファーにこう言ったんだ……」


弟子 「誰だジェニファーって」


吉川 「こいつは焼きもちだ……ってね! テンキュー! テンキュー! アイラブトーキョー!」


弟子 「脈絡もなく外人のスタンダップコメディアンになった」


吉川 「ハジメマシテー。かんざすカラヤテキマシター」


弟子 「そうですか。それでは失礼します」


吉川 「ウェイト! ウェイトスリーイヤー! オンザロック」


弟子 「なんだそれ、三年も待たないよ、石の上で」


吉川 「こうなったら……ファイアービッチ!」


弟子 「……え?」


吉川 「ヤケクソデース! テンキュー! テンキュー! ソニー! アイムソニー!」


弟子 「いや、あなたはソニーじゃない。微塵もソニーじゃない」


吉川 「ジョークデース。ハッハッハー」


弟子 「帰ります……」


吉川 「待って! ジャッカンウェイト!」


弟子 「若干て日本語じゃないか」


吉川 「わしはただ、焼き物の心になることを教えようと……」


弟子 「どの辺がどう焼き物の心だったんですか」


吉川 「ほら……とっても繊細で壊れやすいところが……」


弟子 「ハァ……まったく……世話が焼ける……」


吉川 「それじゃっ! それこそが焼き物の心!」


弟子 「テ、テンキュ……」



暗転

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