怪奇! 羊男

吉川 「しまった! 今日は満月か!」


藤村 「どうしたんだ、急に」


吉川 「み、見ないでくれ!」


藤村 「おい、おまえ様子がおかしいぞ」


吉川 「うぅ……うぅぅ……」


藤村 「うわっ! 急に毛深くなった。どうしたんだ!」


吉川 「うぅぅぅ……」


藤村 「……ひぃ!」


吉川 「メルメルメェ~♪」


藤村 「羊になった……」


吉川 「ばれてしまっては仕方が無い。俺は満月を見ると羊になってしまう羊男さ」


藤村 「そんな……」


吉川 「笑いたければ笑うがいいさ」


藤村 「笑うもんか」


吉川 「傾きたければ傾けばいいさ」


藤村 「いや、別にかぶかないよ! なんで急にかぶかなきゃいけないんだ」


吉川 「俺はこの羊男のせいで人生の闇を見てきた」


藤村 「そうだったのか……」


吉川 「狼男ならいざしらず、羊男だぜ?」


藤村 「かわいいじゃないか」


吉川 「夏場は暑いんだよ!」


藤村 「いや、そんなことでキレられても……」


吉川 「しかも草食だ。狼ならカッコイイし戦闘力も高いのに!」


藤村 「いや、狼男も大変だと思うけど……」


吉川 「お前に何がわかる! 羊男の悲哀がわかるか!」


藤村 「そりゃ、わからないさ。羊男じゃないもん」


吉川 「ウール100%だぞ。お洗濯も気をつけないといけない」


藤村 「洗濯するんだ。体毛なのに」


吉川 「羊男だとばれた瞬間、誰もが離れていったさ」


藤村 「それは……つらい思いを……」


吉川 「紙を食えといじめられたこともあった……」


藤村 「あぁ……なるほど」


吉川 「バカヤロー! 紙を食うのはヤギだ! 羊のプライドにかけて紙なんか食えるか!」


藤村 「羊のプライドって脆そうだなぁ」


吉川 「羊の皮をかぶった狼少年だぞ!」


藤村 「それはただの嘘つきってことか?」


吉川 「でも、お前とも、もうお別れだな……」


藤村 「待てよ!」


吉川 「フンッ! こんな羊男にかまうことなんかないさ」


藤村 「そんなことない。俺たちの仲はそんなもんで崩れるもんじゃないだろ?」


吉川 「……藤村」


藤村 「いいじゃないか、羊男で。なにが悪いんだ! モコモコじゃないか!」


吉川 「あぁ、モコモコだ」


藤村 「俺はな、お前が羊男だと言うことがわかって、ますますお前が気に入ったぜ!」


吉川 「藤村!  お前ってやつは……大好きだ!」


藤村 「俺も、大好物だ!」


吉川 「いや、大好物て」


藤村 「うぅぅ……」


吉川 「あれれ? 心なしかさっきより毛深くなってない?」



暗転

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