奥義
吉川 「師匠! いつになったら奥義を教えてくれるんですか!?」
師匠 「お前の心に邪念がある限り教えることはできん」
吉川 「私はこれまで必死に修行してきました」
師匠 「ならばこの問いに答えられるかな?」
吉川 「問答ですか」
師匠 「パンはパンでも白黒で食べられないパンはな~んだ?」
吉川 「え……。なぞなぞ?」
師匠 「答えられまい」
吉川 「いや、答えられるけど。……なぞなぞで修行の成果見るの?」
師匠 「心に邪念がなければ自ずと答えは導かれる」
吉川 「答え、パンダでしょ?」
師匠 「語るに落ちたな! パンダは食べられる!」
吉川 「えー! いや、食べちゃダメでしょ」
師匠 「美味かな美味かな」
吉川 「パンダ食べるなんて邪念どころか邪悪じゃないか」
師匠 「答えは、なんか黒いカビとかが生えてきちゃったパン」
吉川 「え、えー!? そんなのずるい」
師匠 「ずるいと思う心に邪念があるということじゃ」
吉川 「だって、ちょっとくらいのカビなら食べられないことないじゃん」
師匠 「カビは身体によくない!」
吉川 「パンダ食ってるくせに何言ってんだ」
師匠 「また一から修行をやり直すがいい」
吉川 「師匠っ! わかりました! もう一問お願いします」
師匠 「一問追加に付き2000円だよ」
吉川 「金とるんだ。せこいなー」
師匠 「セコイと思う心にこそ邪念が宿る」
吉川 「どう考えてもそっちの方が邪念だらけだと思うけど……」
師匠 「カーッ!」
吉川 「ヒッ……」
師匠 「ペッ」
吉川 「タンかよ! 汚ねーな、オイ」
師匠 「今なら特別キャンペーン中に付き二問で3980円。サンキュッパ!」
吉川 「大して安くなってない。まぁいいですよ。じゃ一問追加で」
師匠 「足が一本、目玉がが三つ……」
吉川 「わかった!」
師匠 「……の信号機はなーんだ?」
吉川 「え……」
師匠 「な~んだ?」
吉川 「いや、信号機でしょ。な~んだって、なにがなんなのか」
師匠 「3……2……1……」
吉川 「待って待って! えっと、自動車用!」
師匠 「ブブー! 答えはかっこいい」
吉川 「え?」
師匠 「かっこいい」
吉川 「感想!? 感想なの? 信号機の?」
師匠 「かっこいいよなぁ。一家に一台欲しいよ」
吉川 「いや、欲しくないし、かっこいいか? っていうかなぞなぞでもない」
師匠 「お前にはまだ無理だったようだな」
吉川 「全然納得いかない。なんだよそれ!」
師匠 「邪念があるから信号機のかっこよさが見えんのじゃ」
吉川 「えー! そういう問題なのか?」
師匠 「修行して出直すがよい」
吉川 「畜生! もう一問!」
師匠 「そのチャレンジスピリットは認めよう。ちなみにハズレ券を10枚集めると師匠特製油取り紙が貰えるぞ!」
吉川 「いらない」
師匠 「超取れる。もうパッサパサになるから」
吉川 「いいから早く次の問題!」
師匠 「アメリカの初代大統領と言えば……」
吉川 「……ひっかけか?」
師匠 「ブリジストン。……ですが」
吉川 「誰だそれ! 間違ってるじゃないか。引っ掛け以前に間違えてる」
師匠 「アメリカの州五十州を二秒以内に全てお答えください」
吉川 「え……あ……アイオワ! イリノイ! ……テ、テキサッ……」
師匠 「ブブー! 時間切れ」
吉川 「短い! 無理!」
師匠 「邪念があるから無理なのじゃ」
吉川 「邪念がなくても、ものすごい早口でも無理だ」
師匠 「心の目で見るのじゃ」
吉川 「いや、目とか関係ないじゃん。早口の問題じゃん」
師匠 「来年また挑戦してください」
吉川 「納得いかねー! 一ミリたりとも納得いかない」
師匠 「邪念を消すことじゃ」
吉川 「もっとさー。普通のにしてよ。せめて答えられなくても納得いくやつ」
師匠 「2000円じゃぞ?」
吉川 「わかったよ! 払うよ!」
師匠 「それでは吉川さんへのラストクエスチョンです」
吉川 「そもそもなんでなぞなぞ勝負になってるんだ」
師匠 「骨だらけで薄皮一枚。いつもカゼばっかりひいてるのはだ~れだ?」
吉川 「え~と、これもひっかけかな。裏の裏は表か……」
師匠 「3……2……1……」
吉川 「綾野剛!」
師匠 「……」
吉川 「……」
師匠 「ファイナルアンサー?」
吉川 「ひっぱらなくていいよ」
師匠 「答えはCMのあとで!」
吉川 「なんのCMが入るんだ」
師匠 「それでは次の問題です」
吉川 「なんだよ! 今の問題はなんだったんだ! 答えなしか? ひっぱりっぱなしか?」
師匠 「それは……お前を食べるためだよ!」
吉川 「意味わからないよ!」
師匠 「邪念があるから意味がわからないのじゃ」
吉川 「邪念とかだってよくわからない! 初めっから奥義なんて教える気ないんじゃないか」
師匠 「心が雲っておるのぉ。奥義はすでに伝承したはずなのに……」
吉川 「……え?」
師匠 「答えは……オウギじゃ」
暗転
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