バイト

バイト「お弁当は温めますか?」


吉川 「お願いします」


バイト「消費税含めまして946円になります」


吉川 「……千……51円」


バイト「1051円お預かりします。二つ目の願いはどう致します?」


吉川 「へ……?」


バイト「二つ目の願い」


吉川 「え……。なに、願いって?」


バイト「だから、お弁当温めるんですよね?」


吉川 「は、はい」


バイト「それが一つ目でしょ。あと二つ」


吉川 「え? え? なんで急に三つの願い?」


バイト「何でって……そんなこと聞かれてもなぁ。それが二つ目?」


吉川 「え、いや! 違います。二つ目はまだ」


バイト「じゃ、早くしてください」


吉川 「え。なんか、そんなの全然考えてなかった。だってコンビニで……」


バイト「何故だか知りたい?」


吉川 「知りたくないです。教えないで下さい」


バイト「わかりました。それでは最後の願いを……」


吉川 「ええええー! そりゃないよ! 違うじゃん。教えるのが二つ目で、それがダメでって」


バイト「自分で願ったじゃないですか」


吉川 「違うじゃん。逆じゃん! 逆の逆で、あーもうっ! 待って!」


バイト「待つの?」


吉川 「あ、嘘! 待たないで! 違う、願いじゃなくて」


バイト「待たないでおけばいいの?」


吉川 「違うの。何もしないで」


バイト「……」


吉川 「う~んと……天津飯生き返らせてもしょうがないしな……」


バイト「……」


吉川 「あ、あと100個の願いってダメかなぁ? すみません」


バイト「……」


吉川 「あれ? え?」


バイト「……」


吉川 「も、もしかして何もしないでって、聞いちゃったのか?」


バイト「……」


吉川 「なんだよぉ! 全然チャンス活かせなかったじゃん。お弁当温めただけじゃん。畜生」


バイト「……」


吉川 「あ~あ。しょうがない、帰るか。あの、お弁当……」


バイト「……」


吉川 「えー。何もしないって、お弁当も取ってくれないの? 職務放棄じゃん!」


バイト「……」


吉川 「もういいよ。お弁当とってよぉ!」


バイト「わかりました。それが三つ目で」


吉川 「えー! 聞いてたんだ! インチキ!」


バイト「はい、お弁当です」


吉川 「うわぁ。この弁当に願い事二つ使っちゃったのか。……どうせならワンランク上の弁当にしておけばよかった」


バイト「ありがとうございました」


吉川 「あの……おつりは?」


バイト「すみません、他のお客様がお待ちですので」


吉川 「いや、釣りは? 貰ってないよ?」


バイト「いらっしゃいませ、お弁当は温めますか?」


藤村 「お願いします。あと、袋いります。お釣り細かいのにくずしてくれるかな?」


バイト「ありがとうございます」


吉川 「普通なんだ……」



暗転



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