吉川 「お前! どうしたんだよ!?」


藤村 「なにが?」


吉川 「何がじゃないよ! 手!」


藤村 「あぁ、これか。朝起きたらなんかね」


吉川 「なんかじゃないだろ」


藤村 「こんなんなってたから、ビックリして医者に行ったらさぁ」


吉川 「なんて?」


藤村 「ドリルです。って」


吉川 「ドリルだよなぁ。それ以外ないもん」


藤村 「だよね」


吉川 「だよねじゃないよ。手がドリルだよ?」


藤村 「不便だよー。歯を磨こうとしたら虫歯治療になっちゃうし」


吉川 「なっちゃわないよ! そういう問題じゃないだろ」


藤村 「箸もてないからね。日本人として恥かしいよ」


吉川 「まず、人間として恥じろよ」


藤村 「でもいいところもあるんだぜ」


吉川 「どんな?」


藤村 「穴ほるときとか、すごく便利」


吉川 「そりゃドリルだもんな」


藤村 「ま、そのくらいだけど」


吉川 「全然不便じゃん。そんなに穴掘らないだろ」


藤村 「あれだ。かき混ぜる時とかも役立つかも」


吉川 「日常生活で何かを熱心にかき混ぜる状況は少ないだろ」


藤村 「ほら、くるくる回るからさ、トンボ捕まえる時とか便利」


吉川 「いったいどれだけトンボを乱獲する気だ」


藤村 「でもまぁ、手がドリルになってもなんとかなるもんだね」


吉川 「なるの? なんとかなっちゃってるの?」


藤村 「慣れないうちは大変だけどね。鼻血出したり」


吉川 「ほじったの!? ドリルで!? 命知らずだなぁ」


藤村 「慣れてくると、まぁ結構平気」


吉川 「全然平気そうには見えない」


藤村 「まだドリルでよかったよ。考えてごらんよ。手がACアダプターだったら大変だよ。感電しちゃって」


吉川 「差し込まなきゃいいじゃん! なんで充電しようとするの?」


藤村 「ACアダプターは例としても、ビデオテープ。しかもベータだったら」


吉川 「手じゃなくてもつかえないじゃん」


藤村 「だろ? 助かったよ、ドリルで」


吉川 「何が助かってるのか見当もつかないけど、だいたい普通の人は手が異様な変化を遂げない」


藤村 「寝てる間に寄生されたのかなぁ?」


吉川 「ドリルに!? 寄生生物か」


藤村 「名前つけよう。右手だから……」


吉川 「またベタな」


藤村 「ドリー」


吉川 「右には一切触れないんだ」


藤村 「ファンク Jr」


吉川 「レスラーだ。たしかにドリルは強そう」


藤村 「凶器持ってるから、いつも反則負け」


吉川 「使えねー! もっと違う世界で生きろよ」


藤村 「そうする。今日もバイトだし」


吉川 「お前、そんな身体なんだから休んじゃえよ」


藤村 「いや、穴あけるわけにはいかないから」



暗転



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