頭がいい

博士 「吉川くん、大発明じゃ!」


吉川 「今度はなんですか?」


博士 「頭がいいかどうか、瞬時に判別する機械を作った」


吉川 「それはすごいですね」


博士 「さっそくやってみよう」


頭機械「吉川さんの頭の良さは……すごく頭がいいです!」


吉川 「やったー!」


博士 「成功じゃ!」


吉川 「これはなんか嬉しいですね。ところで、どういう基準で判断してるんですか?」


博士 「基準?」


吉川 「頭の良さにも色々あるじゃないですか。論理力、想像力、表現力、知識なんか」


博士 「そう……なの?」


吉川 「俄然不安になってきました」


博士 「最先端の技術で判断してるから間違いなしじゃ」


吉川 「何が最先端なんですか? 機械学習ですか?」


博士 「……見た目とか」


吉川 「ファッションか」


博士 「なんでそんなに追求するの? せっかく頭がいいって言われたのに」


吉川 「だって信ぴょう性が気になるじゃないですか」


博士 「この機械が頭がいいって言ってるんだから頭がいいんだよ。だって頭がいいかどうか判別する機械なんだから」


吉川 「だからそれの証明を……」


博士 「あ、そう。吉川くんはこの機械を信じないんだ? この機械を信じないということは吉川くんは頭が良くないということになるよ? いいのそれで?」


吉川 「いいも悪いも、なんでその理屈が通るんですか」


博士 「だって頭がいいかどうか判別する機械だから。これは科学なんだから。きちんと出た結果を否定すると言うなら、当然それ以外の結果になるでしょうが」


吉川 「その科学の部分が不安だから聞いてるんですよ」


博士 「実験結果で今のところ100%正しい結果が出ておる」


吉川 「あ、そうだったんですか? そういうエビデンスがあるならいいんですよ。ちなみにどのくらい実験したんですか?」


博士 「見てみるか?」


吉川 「是非」


頭機械「博士の頭の良さは……すごく頭がいいです!」


博士 「……な?」


吉川 「なにがです?」


博士 「正しい結果が出ておるじゃろ? わしで実験した結果、100%正しい結果が出ておる」


吉川 「待って下さい。そういうことなんですか? その、博士の頭の良さは何が保証するんですか?」


博士 「この機械が保証してるでしょうが!」


吉川 「そうじゃなくて。この機械以外で客観的に」


博士 「吉川くんは、わしの頭が良くないと、そう言いたいのか? そうなのか? そういうこと言う? 踏み込んじゃいけない領域ってのない?」


吉川 「いや、その。個人的な感想ではなくてですね。科学である以上客観的な事実が欲しいじゃないですか」


博士 「バカだと思ってたんだ。わしのこと。ふーん。まじで付き合い方考えるわ」


吉川 「思ってないですよ。博士のことは頭がいいと思ってますよ!」


博士 「だったら機械もあってるでしょ!」


吉川 「ボクと機械が間違ってるかも知れないじゃないですか?」


博士 「吉川くんは間違ってない! なぜなら吉川くんもまた頭がいいからじゃ」


吉川 「えへへ。そうですかねぇ?」


博士 「それは機械も証明している。間違いのない事実じゃ」


吉川 「わかりました。ボクたち頭がいいですね」


博士 「その通りじゃ。頭がいいのじゃ」


吉川 「頭が良くてよかったですね」


博士 「まったくじゃ。ハッハッッハ」



暗転


明転



頭機械「この文章を読んでいるあなたの頭の良さは……すごく頭がいいです!」



暗転

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