エスパー

エスパー「えいっ!」


吉川  「あっ!?」


エスパー「どうです?」


吉川  「スプーンが……、曲がった」


エスパー「ビックリした?」


吉川  「そりゃ、ビックリしたけど……。このスプーンどうするんの?」


エスパー「なんだよ! スプーンの心配か! エスパーが目の前にいるのにスプーン重視か!」


吉川  「いや、だって……」


エスパー「なんだお前は! スプーンおばさんか!」


吉川  「スプーンおばさんじゃないよ」


エスパー「当たり前だ! スプーンおばさんは、もっと小さい!」


吉川  「大きさの問題か……」


エスパー「もっと、こう、あるでしょ? すげー! とか立派! とか」


吉川  「立派! って誉め言葉、あんまり使わないよなぁ」


エスパー「そんなの問題じゃないよ。なんだよ。俺エスパーだよ?」


吉川  「はぁ……」


エスパー「もっとリアクションしてよっ!」


吉川  「すげーな! このスプーン」


エスパー「スプーンじゃなくて!」


吉川  「すごいピカピカ磨かれてる!」


エスパー「ズコー! エスパー、ズコー! そんなの俺の仕業じゃないじゃん!  俺のエスパったのを評価してよ!」


吉川  「あ! このスプーン、食べづらい!」


エスパー「ズッコケー! エスパー、ズッコケー! そんなの見ればわかるじゃない。 曲がってるんだもん。食べ易さとかじゃなくて、超能力を評価してよ!」


吉川  「このスプーン、高いんでしょ?」


エスパー「なんだお前は、スプーンに夢中か! スプーンの虜になっちゃってるのか!」


吉川  「これって元に戻せるの?」


エスパー「戻せるよ」


吉川  「へぇ……」


エスパー「あ! じゃ元に戻したら見直す? 俺のこと見直す?」


吉川  「そうだねぇ……」


エスパー「よぉし! エスパーはりきっちゃうぞ! 六倍はりきっちゃうぞ!」


吉川  「基準がまるでわからない」


エスパー「エイッッッ!」


吉川  「あ、もど……った……?」


エスパー「どうよ?」


吉川  「なんか、ここのところ、段々になってますけど……?」


エスパー「そんなの、しょうがないじゃん。そんな綺麗にいかないよ」


吉川  「なーんだ」


エスパー「なにそれ! 何?その目は! すごい侮蔑の目」


吉川  「だってなぁ……」


エスパー「なんだよ!」


吉川  「スプーン一本ダメにしただけじゃん」


エスパー「ダメになってないよ! 戻ったじゃん」


吉川  「なんか、段々じゃん」


エスパー「でも大体直ってるでしょ?」


吉川  「そんなもん超能力でもなんでもない。俺なんか何の能力も使わないでスプーンを曲げないぜ!」


エスパー「普通だよ! そんなの普通じゃん!」


吉川  「じゃ、お前は普通以下じゃないか」


エスパー「普通以下! この俺が!」


吉川  「まったく、ろくなことをしない」


エスパー「ムキィ! もう怒った。本気出すぞ! 本気で曲げるぞ!」


吉川  「もう曲げなくていいって。迷惑だから」


エスパー「うるさいっ! エイエイエイィィィッッッ!」


吉川  「……?」


エスパー「ヘヘンッ! どうだ見たか、バーカ!」


吉川  「え? ……何が曲がったの?」


エスパー「バーカバーカ! これでも見ろ!」


吉川  「あ……」


エスパー「どうだ! バーカ!」


吉川  「ヘソか」



暗転




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