ゴースト
吉川 「おっす」
藤村 「ギャーッ!」
吉川 「いきなりギャーってことないだろ」
藤村 「吉川っ!? な、なんでこんなところに!?」
吉川 「何でって言われても……」
藤村 「だってお前……、1週間前に死んだじゃないか!」
吉川 「あぁ。やっぱそうか」
藤村 「やっぱそうかって……」
吉川 「俺、オバケかもしれない」
藤村 「かもしれないって……、なんで自覚症状がないんだ」
吉川 「いやぁ、死んだらしいんだけど、記憶がないんだよね」
藤村 「そういうもんなんだ」
吉川 「気がついたらさぁ。なんか、こんなんなってた」
藤村 「こんなんって……」
吉川 「ほら、見て。毛が三本」
藤村 「本当だ」
吉川 「……な?」
藤村 「なにが、なだ」
吉川 「オバケだろ?」
藤村 「いや、毛が三本は、オバケの証拠にはならないだろ」
吉川 「でもなぁ。みんなノーリアクションなんだよ」
藤村 「そりゃ、オバケだから見えてないんじゃない?」
吉川 「コマネチッ!」
藤村 「……」
吉川 「……な? ノーリアクションだろ?」
藤村 「いや、これはただリアクションに困っただけだ」
吉川 「オバケはつらいよ」
藤村 「オバケが原因じゃないと思うけど」
吉川 「お前は昔から霊感が強いっていってたからさ」
藤村 「だから俺のところにきたのか」
吉川 「久しぶりに人と会話できたよ」
藤村 「いきなりでビックリした」
吉川 「オバケってもっと便利かと思ってた」
藤村 「不便?」
吉川 「空飛べたり、壁すり抜けたり」
藤村 「できるの?」
吉川 「全然できない」
藤村 「じゃどうやってこの部屋に入ってきたんだよ」
吉川 「隣の部屋の窓割って」
藤村 「おいっ! ふざけるな!」
吉川 「足だってちゃんとあるし」
藤村 「あ、ホントだ。って、土足じゃないか!」
吉川 「NIKEだよ」
藤村 「そんな問題じゃない。靴を脱げ!」
吉川 「だって隣の部屋、ガラスが割れてるんだもん。素足じゃ危ない」
藤村 「お前が割ったんだろ!」
吉川 「怪我したらどうするんだ」
藤村 「オバケだろ! 死んでるだろ!」
吉川 「そんなズバリ言わなくても……。もっとオブラーt、オバラートに包んで言ってよ」
藤村 「なんで言い直した? ちょっとオバケに寄せただろ」
吉川 「指摘しないで。これでもアイデンティティの確立に必死なんだよ」
藤村 「しょうもないアイデンティティだな」
吉川 「だいたい人の顔見てオバケだなんて、失礼だ」
藤村 「だってオバケじゃんか」
吉川 「空も飛べないし、壁も抜けれないから、オバケじゃない」
藤村 「どう思おうと勝手だけど……」
吉川 「あ、でも靴には化けられるよ」
藤村 「なんでだ! なんで一番不必要な要素を兼ねそろえてるんだ」
吉川 「でも靴に化けるとガラスとか危ないしなぁ……」
藤村 「だったら窓を割るな!」
吉川 「でもこうして会いにきた甲斐があったよ」
藤村 「手段はめちゃくちゃだけどな」
吉川 「あ……。そろそろお迎えが来る」
藤村 「え……? もう……、会えないのか?」
吉川 「いや、会えるよ」
藤村 「俺が……、死んだ時か」
吉川 「明日また来るから」
藤村 「来れるのかよ! じゃ、なんのお迎えだ」
吉川 「これから、墓場で運動会があるんだ」
暗転
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