藍戸辺比嘉というオタクの物語(仮)
野内ラス
第1話
俺は思うんだ。オタクを隠して生きるなど真のオタクではないと。堂々と萌え萌えのアニメを見て、ロリのアニメを見て何が悪い!!だから、俺は教室でも、電車の中でも、お昼ご飯の時でも、好きな時に好きなアニメを見る!!そう決めたっ!!もちろん、イヤホンはするがな。
高二に進級したての今日この頃。この時期はクラスメイトにとっては大切な時期だろう。なにせ、この時期でクラスでの立ち位置が確立するからな(俺は関係ないが)。できることならみんな、陽キャグループに属したいのだろう。そうすれば1年間を安全かつ最高に過ごせるから。と、俺の唯一無二の友達が熱弁していた。まぁ、そいつは高一の夏休み明けの二学期に遅すぎるデビューをし、無事死亡しそれから姿をしばらく見ていない。きっと、家でアニメでも見ているのだろう。元気にしているだろうか…、と旧友に思いを馳せているとクラスの騒がしさが一瞬静まる。
それに、つられるように読んでいるラノベから俺は顔を上げ、そして、納得する。なぜなら『青空夕陽』が教室に入ってきたからだ。彼女はアニメの世界から出てきたのではないだろうか?と言うくらいに完璧だった。つややかな黒髪にナイスなボディ、と言っても胸は控え目、整った顔立ちは見るものを吸い寄せ離さない。告白された数は知れず、しかし、その全てを『ごめんなさい』の一言で切り伏せる。そして、いつしかこんなあだ名が付いた。『天の姫』俺なりにこの意味を考えるに、顔も、頭もずば抜けており、まさに雲の上の存在。手を伸ばせば届くような存在ではない。そんな所だろう。そう考える。まぁ、そんな深い意味はないだろう。おっと、いけないいけない。こんな事に気を取られている場合では無い。今、いいとろだった。直ぐに思考を切り替え、ラノベに再び視線を落とす。
「ねぇ、藍戸辺比嘉君。」
「……」
「ねぇ、聞いてる?」
「……」
「ねぇっ!!」
「っ!?」
バンッ!と俺の机を叩くいい音が教室に響く。それに、驚き思わず顔を上げる。クラス中の視線が集まる。
「ねぇ、なんで無視するの?」
「あ、い、いや、その、青空さんがこんな俺に話しかけるなんて…」ありえない。
と続けたいが思うように声が出ない。しょうがないだろ女子と話すのは苦手なんだから(泣
「当たり前でしょ。なんで、私があんたと話さないといけないのよ…まぁ、いいわ。」
夕陽は自分を落ち着けるように、髪をかきあげ続ける。
「進路調査表、あんただけ出てないの。怒られるのは私なんだから。今日中よ、今日中に出しなさい。分かった?」
と、それだけいい自分のグループに去っていく。なんと、恐ろしい。彼女『青空夕陽』は親をオタクに殺されたのか、と思うくらいにオタク《俺》に当たりが強い。俺だけにだ。
「藍戸辺君、大丈夫?」
それを見兼ねてか隣の席に座っている遠田久遠が声をかけてくる。珍しい事もあるもんだ。俺が言うのもあれかもしれないが彼女の声を自己紹介ぶりに聞いた。
「あ、あぁ。」
目を合わすことなく軽く振り向き、そう答え直ぐ向きを直しラノベに視線を落とす。
「そう、あ、あの……。」
「ん?」
何か言いたそうなので視線はラノベに向けつつ、可能な限りで振り向く。
「い、いや、やっぱなんでもない。ご、ごめんね。」
「そうか。」
何を言いたかったのか、ソワソワしながらこちらをチラチラと見ているが結局、彼女から話しかけられることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます