第2話 よろしくお願いしますマスター

「お前は、俺の神器だっていうのか?」


『YES、マスター。自分はマスターが右手の指に装着している神器でございます』


 脳内に綺麗な発音の女声が響く。


 知らなかった……。神器はAIが搭載されたインテリジェントなデバイスだったのか。これで俺もリリカルな魔法が使えるようになるのだろうか。


「≪ティック・ヴィーナス≫ってのがお前の名前なのか?」


『YES。どうぞ、マスターが呼びやすい名称でお呼びください』


 なるほど、良い名前だ。どうしてそう感じるのかわからないが美しい響きだ。きっとヴィーナス――女神の名を冠しているからだろう。そうに違いない。


「そうだな、じゃあ……これからよろしく頼むぞ


『YES。こちらこそよろしくお願いいたします。』




    ◇    ◇




 相棒との挨拶を済ませた俺は変わらず草原に立っていた。


「今何時かわからんがここに転移されてからしばらくたったし、そろそろ移動した方が良さそうだな」


 この草原のど真ん中に留まっているわけには行かない。俺は食料も野営道具も持っていないのだ。まずは日が暮れる前に村などの安全な拠点を見つける必要がある。自分の乳首をいじっている場合ではなかった。


 だが、移動前に確認すべきことがある。


「まずは自分の能力を把握しないとな」


 道中はモンスターや他のプレイヤーに襲われるリスクがある。対抗手段として自分が何をできるのか把握しておくべきだ。


「異世界といえば、これだろ! じゃあいくぞ――『ステータスオープン』! ブオン!」


 半透明なウィンドウが空中に展開されることを期待してセルフで効果音つけた。


 しかし、なにもおこらなかった!


 …………いくら待ってもステータスが出てこない。何故だ?


『マスター僭越ながら自分が口頭でステータスを開示いたします。よろしいでしょうか?』


 どうやらコールで空中にステータスを投影できないらしい。AIアシスタントみたいに手軽に使えると思っていたが違ったようだ。


 神様がやってたから俺もできると思ったんだが、あれは特別な力だったのだろう。


「なら相棒、お前に任せた」


『お任せください。マスターのステータスを読み上げます。




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<基本情報>

名前  :  高梨椿たかなしつばき

年齢  :  16

身長  :  160cm

体重  :  48kg

バスト :  85cm

ウエスト:  57cm

ヒップ :  89cm

出身  :  エルデム

職業  :  狂信的性癖追求者

レベル :  1


<パラメーター>

強さ  :  りんご1563449コ分

魔力  :  好調

肉体  :  まあまあ敏感

性経験 :  無し

性的嗜好:  乳首

特殊体質:  色情狂の渇望Lust of hypersexuality


<乳首>

乳輪直径:  30mm

乳頭直径:  10mm

長さ  :  9mm

色   :  #FFCEC6


<神器>

名称  :  ティック・ヴィーナス

スキル :  ビーチク


<経験値>

EXP  :  106

NEXT :  MAX


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以上でございます』


「なるほど……。強さは転生前と比べて大体りんご90万コ分強化されているな。今の魔力は5段階評価で上から2番目くらいの量、か……」


 強さ――つまり、身体能力は男だった時と比べて2.5倍近く強化されている。俺は普段から自分の力をりんごの数で計測していたから手に取るようにわかった。


 パラメーターによる補正はかなり影響が大きいようだ。『職業』が無いに等しい地球人では、たとえトップアスリートであっても強化された俺に太刀打ちできないだろう。


 魔力は、今日が調子良い日であることはわかるが総量はわからないな。総量を把握するためには、実際にスキルが何回使えるか試行錯誤するしかなさそうだ。


『このステータスをいとも簡単に読み解くとは……。お見事でございます、マスター』


 何もしていないのに褒められてしまった。かなりわかりやすいステータスだったと思うんだがな。例えば、乳首の色がカラーコードで表現されている部分とか。


 だが、俺にもわからない項目があった。質問をすることにしよう。


「名前は……覚えてないが、あの効果はなんだ? やたら難しい名前のやつ」


『【色情狂の渇望】でございますね。あれはマスターの職業【狂信的性癖追求者】特有の体質です。効果は『自身の欲望を満たすとスキルに新しい能力を追加する』でございます』


 スキルに能力を追加する特別な体質、ユニークな職業にふさわしく強そうな効果だ。能力の取得条件は自身の欲望を満たすこと。俺の場合は女の乳首を見たり、つまんだり、舐めたりすることだな。


 この条件を満たすことでビーチクスキルに新しい能力が追加されるのだろう。


「さっきまで俺は自分の乳首をいじっていたが、それで能力は追加されたのか?」


『NO。残念ですが能力追加には至らなかったようでございます』


 やはりそうか。俺は自分の乳首では満足できなかったからな。能力を得るためには誰かに乳首をいじらせてもらうしかない。


「じゃあ今のビーチクスキルは何ができるんだ?」


『申し上げにくいのですが、現在ビーチクスキルに能力はありません』


「なんだって!?」


 元々の母乳を出す効果すらないのか!? それは困ったな……。


『マスター、己の乳首愛を信じてください。 マスターがそれを信じ続ける限り、自分は必ずマスターのご期待に応えます』


 乳首愛を信じろ……か。


 俺が乳首を愛する限り、この体質で得る能力は乳首に関係したものになるのだろう。そうであるならば願い続ければ、母乳だって出せるに違いない。それどころか、まだ見ぬ乳首スキルも手に入るはずだ。未知の能力に大いに期待するとしよう。


 しかし、現在スキルが使えないのは辛いものがある。スキル無しではまともな戦闘が出来ない。一刻も早く乳首触らせてくれる子を見つけなければ……。


「じゃあ次の質問だ。NEXT(レベルアップまでの経験値)がMAXになっているが、これ以上レベルが上がらないってことか?」


『YES。マスターの職業――【狂信的性癖追求者】はレベル1から成長しません。これはユニークな職業特有のデメリットです。ですが、その代わり【色情狂の渇望】などの特別な体質を習得しています』


 特別な体質があるが、レベルが上がらないデメリットも併せ持つのか。ユニークな職業であることは、必ずしもいいことばかりではないようだ。


『他に質問はございますか?』


「いや、もう大丈夫だ」


 俺は自身のステータスを把握できた。身体能力は約2.5倍、スキルは現在使用不可、レベルアップも不可能だ。


 体はかなり強化されているが、スキルが何も使えないのは厄介な問題だ。このままでは他のプレイヤーやモンスターと一戦を交えることすらできない。


 だから、俺が最優先で遂行すべきミッションは、乳首を触らせてくれる女の子を探すことだ。


 そのためには、やはり人が住んでいる集落までたどり着く必要がある。


 けれど――目の前に広がる風景は辺り一面緑の草原だ。誰かがここを通った痕跡は一片も見当たらない。




「なあ相棒、俺はいったいどこに向かえばいいんだろうか?」

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