第二章 天涯孤独の少女
第1話 さあ! お楽しみの時間だ!
眼前には見渡す限りの草原が広がっていた。
樹木の類すらいっぺんも見当たらず、地平線は晴れた空と青々とした草で綺麗に分かたれていた。
さながらXPの標準背景のように……ダメだな、この表現は風情が無さすぎる。
とにかく俺は、中央部に空洞がある赤い剣を地面に突き刺したら名作RPGになりそうな場所に立っていた。
360度、全方位を見渡したが、人もモンスターもいる気配がない。
で、あるならば――
「やることは決まってるな! さっきまで
俺はさっそく服を脱――――ごうとしたが、
「な、なんだ!?」
右手で掴んでいたカードが強く輝きだした。そして白く光る球体に変化した。
「そういえば、カードは異世界に転移したら形状が変わると言ってたような気がするな」
球体は徐々に形を変え、人差し指ほどの大きさの穴が空いたリングに変化した。
指輪――かと思ったが、
「まあ、乳首に関係したアクセサリーといえばこれしかないよな」
神器は指輪のような環状の装飾品に変化した。しかし、本来宝石が埋め込まれているであろう箇所は飾り気のない円球となっていた。
つまるところ――――これは指輪ではなくピアスだった。それも耳に装着するタイプではなく、体のどこかに通すタイプだ。
「でも俺の趣味じゃないんだよなぁ……」
そう、俺はあるがままを楽しむ主義だ。別に乳首に限った話ではない。目玉焼きは何もかけずに食べるし、サラダはドレッシングを使わない。寿司もサビ抜き醤油抜きが好みだ。
かなり変わっていると自覚しているが、俺は素材そのものが一番好きなんだ。
だから装飾品も好きではないが……。神器は身に着けなければ効果を発揮できない。
「仕方ないな。耳に通しておけばいいか」
といっても耳に穴は開いていない。リング状だったのでひとまず右手の薬指につけることにした。球体の部分が邪魔でフィット感はないが耳に穴を開けるまで我慢しよう。
これで神器の件はいったん片付いた。
さあ――――これからが本番だ!
俺はボタンが外れた状態で羽織っていたYシャツをその辺に放り投げた。そして腕をクロスさせ裾をつかみ、思い切り上げて肌着を脱ぎ捨てた。隠されていた双丘があらわになり脱いだ反動でぽよんぽよんと上下に揺れた。
一糸まとわぬ上半身を風が通りスース―として心地良い。俺は今、男子制服のズボンとトランクス以外は何も身に着けていないのだ。
「俺は――――自由だ!」
叫ばずにはいられなかった。あたり一面の大自然が開放的な気分を増長させる。興奮冷めやらぬまま、俺は自身の欲望を満たすための行動を開始した。
「どれどれ……」
俺は自分の胸元に向けて視線を落とした。
「デカさは……やっぱり普通だな」
女になったときチェックしたので、わかっていたが胸は大きくはない。おそらくDカップくらいだろう。ギリギリ巨乳の定義から外れるサイズだ。俺は城崎みたいな爆乳が好みなので物足りなさを感じた。
それでも、小ぶりな手のひらでは隠し切れずはみだしてしまう程度には豊満に実っている。
そして――
「おおっ! これはいいぞ!」
女性らしい柔らかなふくらみ、その頂点は俺の嗜好に合っていた。きめ細かく艶々したふたつの盛り上がり、その中央のつぼみはピュアな薄い桃色で統一されていた。先っぽはナチュラルな状態でもピィンと上向きに起きあがっている。
色と形状、両方とも俺の合格ラインを大きく上回っていた。
この体は神様が仕立てたといっていたな。いい仕事をしてくれたものだ。神様が自信作だとアピールしたのも頷ける完成度だ。
「――――――極上だ!」
さて……目視すべきポイントは確認した。だとすれば次は――
「――触診だな!」
♪ ♪
あれからどれくらい時間がたっただろうか。結果を話そう。
周辺のむにゅむにゅとした柔らかさとは対照的に、先端部にはコリコリとした瑞々しいハリが感じられた。そこを弾くとバネのように勢い良く跳ね戻ってくるほどだ。
なにより、いじっている間、男のそれとは比にならない頭がふわふわする気持ちよさがあった。
触診を始めた直後は時間を忘れるほど夢中になってもてあそんでいた。
だが――――
「これじゃないな……。俺が求めていたものはこれじゃない……」
ひとしきりいじくりまわした後、俺はこの結論に至った。
確かに感度が良くなった。感触も心地よかった。
……だが、これは所詮自分の体だ。
男のときは自分のものには大して興味を持っていなかった。それと同じだ、女の体になったとしても自分の体であることには変わりない。
元々、『エロゲみたいに女になってあれこれしたいぜッ!』という願望が俺には無かったからかな。けっこうな時間まさぐってみたが満足はできなかった。むしろ俺の理想からは一番離れている気さえした。
「結局、俺は他人のじゃないと満足できないんだろうな」
期待していた充足感を得られず、ため息をついた。
『欲望は満たせなかったようでございますね』
「――――ッ!?」
突然、得体の知れない女の声が響いた。透明感のある澄んだボイスだ。
警戒して周囲を見渡す。だが……
「誰もいない……はずだよな?」
この場には、転移時と変わらず誰一人存在しなかった。
『驚かせるつもりはありませんでした。申し訳ございません』
周囲には誰もいないはずだが、妙に活舌が良く聞き取りやすい声が再び聞こえた。自然の音がたびたび響き渡る草原でこれほど鮮明な声が届くのは不自然だ。
だが、ここは異世界だ。テレパシーなどで遠くから直接脳内に語りかけているかも知れない。
「……お前は……誰なんだ?」
敵でないことを祈るばかりだ。
俺はまだ自身の能力を把握していない。今はただの上半身裸の女だ。
もし戦闘になれば、勝つ見込みはない。
俺の耳――いや、脳内に再度そいつの声が響いた。
『ご挨拶が遅れました。初めまして、マスター。自分はマスターの神器です。名称は――≪ティック・ヴィーナス≫――と申します』
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