第10話 神の望みなのです
「神が望むこと……ですか?」
「そうだ。俺は神様に色々と事情を説明されたし、特別なカードも貰う予定だ。だが、神様が何を考えてそんなことをしたのか、それがわからないんだ」
この神様は異世界で行われるゲームに参加させるために、俺たちを神殿に呼び寄せた。そこで神様は俺たちにゲームのルールを説明した。
ルール説明が終わった後、神様は自身の考えを述べた。その内容は意外なことに『ゲームを放棄して異世界で暮らせ』というものだった。だが、俺たちはそれを拒否した。
その後、神様は俺たちに神器となるカードを配った。あとから聞いた話だが、ここで配られた白いカード――それは弱い神器だった。
最後の一人である俺のターンのとき、神様は俺が特別であることを告げ、宝物部屋を見せてくれた。
宝物部屋では、神様は地球人がゲームを勝ち残るのは不可能である理由を説明してくれた。
そして今、神様は俺に特別なカードを渡そうとしている。
これまでの経緯を振り返ったが、神様の行動原理がまったく読めない。
だから……俺は異世界に転移する前に神様に尋ねたのだ。
「
とてつもなくスケールがデカい話だ。まあ、ちょっと抜けてるところがあるけど一応神様だしな。
「
確かに、俺たちはその条件を満たしているな。自活できるって部分は怪しいが……頑張ればできないことはないだろう。
『若い魂であること』、『自活できるだけの教養を身に着けていること』これらを基準とする理由はすぐにわかった。このゲームに参加することは異世界に転生することと同義だ。新しい人生が与えられるなら、若い命が優先されるのは道理だ。だが異世界転生後の生活は保障されていない。最低限の教養がなければ野垂れ死んでしまうだろう。
……残りの一つを基準にする理由は、わからない。俺は神様に問いただす。
「『全員が知り合いであること』を基準にした理由は何なんだ?」
「神がみんなに話した意見のとおりなのです。
最初からゲームに勝つことは想定していないのか……。
まあ、これから宇宙から来た戦闘民族みたいなやつらと戦うことがわかってるなら、即サレンダーを提案するよな。
…………いや、待て。だったら――
「どうして全員に地球人が勝てない理由を説明しなかったんだ。それを話せば神様の提案を受け入れるかもしれなかっただろ」
「……あなたにそれを話したのは特別なのです。あなたが、他の世界の者と互角以上に戦えるかもしれないカードを手に入れることがわかっていたからなのです。そうではない……白いカードを渡す相手に『この神器では絶対に勝てないから生き返りを諦めろ』と告げるのは酷なことなのです……」
「でも言わないよりはマシなんじゃ――」
俺の言葉は遮られた。いつも淡々としていて、感情の起伏が乏しい神様に。
「無駄なのです。
神様の言葉はそこで途絶えた。
過去にゲームの放棄を強く訴えかけた経験があるのだろうか。そして、それは上手くいかなかったのだろうか。
神様は俺から視線を逸らし、どこか遠くを見つめている。
「むかし、あなたと同じく、ここで一緒に遊んだ子がいたのです」
神様は瞳に悲しみの色を浮かべ、郷愁を感じるように話を切り出した。
◇ ◇
その子は、おバカではありましたが、とにかく元気いっぱいでにぎやかな印象でした。歳は16、あなたと同じなのです。
前回のゲーム開始前の話です。神はいつものようにルール説明を終えると、みんなにカードを配ったのです。もちろん、事前に異世界で生活するように進言しましたが、誰も賛同はしてくれなかったのです。
彼女の番になったのです。神は適正を確認しました。彼女は――あなたと違い、特別ではありませんでした。
ただ、神は彼女が心配でした。彼女は神が説明したルールを理解できなかったようで、これから自分が何をするのかわかっていない様子だったからです。
いつもであれば説明後すぐにカードを渡すのですが、神はいったん彼女を引き留めたのです。実は、転移させるまでの期限には3日の猶予があるのです。
神はゲームのルールと異世界に行くことを理解させるため何度か説明を試みたのですが、なかなか理解してもらえなかったのです。
彼女はそもそもゲームというものを知らなかったので、一緒にテレビゲームをして理解させることにしたのです。
彼女は神よりもゲームが下手でした。初めて触れたから当然なのです。
神がお手本としてゲームをプレイすると彼女は上手だと褒めてくれたのです。つい嬉しくなってしまい、目的を忘れて何時間も一緒に遊んだのです。彼女は人と仲良くなるのが得意でした。
結局、2日間ろくに説明が進まず遊んで過ごしてしまったのです。神はそれが過ちだと気づいていました。情がうつってしまうとお別れが寂しくなるのです。だから神はいつも会って早々に転移をさせているのです。
3日目、神は彼女に告げたのです。地球人では絶対に勝ち残れないから異世界で生きる道を探すべきだ、と。
けれど、彼女はそれを拒否したのです。『私には生き返ってもう一度会いたい人たちがいるから』、そう言われました。
『それを望むのであれば……これ以上は何も言わないのです。最後まで勝ち残りもう一度
そうして、彼女にカードを渡し、お別れをしたのです。
……ですが…………再開することは叶わなかったのです。
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