第382話 層の厚い投手陣
時を同じくして、秋田腕金高校のミーティング。
「という訳で、いよいよ明日に迫った船町北戦に向けて最終確認をしていくぞ。まずは相手の投手陣だが、エース番号を付けているのが吉田拓也。130キロ台のストレートに、スライダー、カーブ、チェンジアップと3種類の変化球を操る。ネットで見つけた動画をいくつか見た感想だが、変化球のコントロールが非常に安定していて、ストレートも球速以上に打ちづらそうにしているバッターが多かった。恐らく、中々キレのあるストレートを投げるのだろうな。まあキレが良いといっても、うちの古田には遠く及ばんがな」
安田監督のその言葉に、満足そうなドヤ顔を浮かべる古田。
「だが、変化球だけなら古田以上の完成度だし、非常にバランスの取れたピッチャーだ。秋田の予選で対戦したどのピッチャーよりも、総合力では上かもしれん。中々手強いピッチャーだぞ」
変化球だけなら古田以上という安田監督の言葉に、不満そうな表情を浮かべる古田。
「そして恐ろしいことに、船町北にはこの吉田と同等かそれ以上のピッチャーが2人もいる。それが比嘉流星と川合俊二だ。吉田は基本先発で最初から最後の回まで投げ切るのに対して、この2人は打者1巡ごとに交互に交代して投げるという変わったスタイルを取っている。ではまず比嘉についての情報だが、なんと持ち球はストレートのみ。球速は130キロ代後半が中心で、時折120キロくらいの遅いストレートも織り交ぜてくる。これだけ聞けば大したことない投手にも思えるが、甲子園予選では何とこのストレートのみで三振の山を量産する圧倒的なピッチングを披露している。この球速でこれだけ三振を奪えるということは、ストレートのキレだけなら恐らくうちの古田以上だろうな」
ストレートのキレだけなら古田以上という安田監督の言葉に、再び不満そうな表情を浮かべる古田。
「そしてもう1人の川合についてだが、なんとこいつもストレートしか投げられない。だが、そのストレートはほぼ全球150キロを超えている。球速だけなら、うちの古田以上だな」
球速だけなら古田以上という言葉に、三度不満そうな表情を浮かべる古田。
「そしてこいつの1番厄介なところが、この球速で四球やデッドボールを連発するノーコンピッチャーだという点だ。レギュラーが9人しかいないうちにとってデッドボールで怪我をしてしまうのが1番恐いからな。ある意味、3人の投手陣の中では1番危険な存在かもしれないな」
「しっかし改めて船町北の投手陣を見ると、層の厚さがうちとは桁違いだな」
「このレベルのピッチャーが3人もいるとか反則だろ」
「誰だよ船町北のことをラッキーチームだとかほざいてた奴は」
「お前だろ」
「まあ確かにどのピッチャーも強敵そうだけどさ、うちには古田がいるんだぜ。大量得点は無理でも、1点だけも奪えれば勝てるんだ。きっと大丈夫だろ」
「さあ、それはどうかな」
そう切り出したのは、キャッチャーの菊池だった。
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