一奇当選!
亞泉真泉(あいすみません)
第1話
学級委員長。
その遙か超絶なる高み。
高校生が手に入れられる最大の権力と言っても過言ではない。
一説には、学級委員長が持ちうる権力は小国の指導者にも匹敵すると言われている。
その力は、自身の裁量権だけではなく、給食委員による富の管理、図書委員による知識の支配、保健委員による福利厚生の実権などの高校生活で重要な位置を占める機関の人事権を有することにもある。
しかし、それだけの権力を手に入れられるにもかかわらず、自ら立候補する者は少ない。
平等思想と言うぬるま湯の中で生きている現代の高校生たちは、権力者を憎み、排除しようとする傾向がある。
一度、学級委員長になったからには、日常の中で常に敵を意識することとなり、場合によっては暗殺者から命を狙われる覚悟も必要となる。
そのため類まれなる精神的な強靭さを持っていなければ学級委員長は務まらない。
さらには権力をふるうときに生まれる痛み。
それをものともしない冷酷な心を持っていなければならない。
他人を哀れんだり、共感する優しさを、あえて切り捨てる強さが求められる。
もちろん、問題が起こった時に振りかかる責任の大きさという面もある。
このような事情を理解した上で、学級委員長に立候補する者がいたら、それは狂人か変人か天才かバカかだ。
そのせいで一般的な高校における学級委員長というのは、クラスの中から生贄として選ばれ、実権を与えられることもなく、お飾りとして存在するものとなっている。
ボク、
祀り上げた生贄に厄介事を押し付けることもせず、ただ漫然と学級委員長の存在を見て見ぬふりしていたのだ。
そしてその学生生活は、クラスメイトたちの頭上に暗い影を落としていた。
明確な統治の方針がなければ人は低きに流れるもの。
クラスの成績は地に落ち、教室内は汚れ、教師たちは明らかにダメクラスのレッテルを貼り、腫れ物扱いで距離を取る。
権力に脅かされるのを恐れつつも、人々は心の中で強力な指導者の登場を待ちわびていた。
そんな中で、一人の女生徒が名乗りを上げた。
クラスの中でも彼女の素性を知らない者はいない。
丈の短い制服の下には網タイツのような下着が見え隠れする。
制服のサイズが小さく見えるのは、身長が低いくせに、身体つきが妙に肉感的なせいでもあるのだろう。
鋭い視線、軽い身のこなし、大方の想像通り、彼女は古くから伝わる忍者の家系。
教壇の上で、彼女の切れ長の釣り上がった目は、周囲の状況を警戒する。
一般の高校生の枠にははまらない異常な生徒、だからこそ学級委員長という肩書がどことなく似合う。
その強靭な意志の現れのように、編みこみによって太く一本になった黒髪が揺れる。
「拙忍のクラスに愚民はいらぬぞよ」
彼女のその狂気は、人々の心を大きく揺さぶった。
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