女王卑弥呼ー絶世の悪女ー

アヨガン・デスバレー

第1話 誕生

 夏の朝、雲はなく、明るい日差しが差し込む。涼やかな風がそよぎ、暑くない。

一日が始まって間もない瓜国(ウリノクニ)で、一人の娘が生まれた。サスヒと名付けられた。


 日が高くなり、細かい雲がなびく。立っているだけで暑くなる。風も暖かい。

皆が木陰に移動する頃、瓜国でその日二人目の娘が生まれた。タカヒと名付けられた。


 分厚い雲が増えた。西の空が赤紫に染まる。少し蒸しっとする。

ちょうど皆が食事を始める頃、三人目の娘が生まれた。ヒグレと名付けられた。


 三人目の娘の誕生を見届けた集落の人々は、やっと食事を始めた。日はすっかり落ちてしまい、広場でいくつか焚火をして皆で囲って食事をした。

 「赤子が三人も生まれるだなんてめでたい。五日後の宴はより盛大になりますでしょうね。」噂好きのヒエは蒸した雑穀米をほおばりながら、目を三日月のように細めて話す。「でも嫌だわ、女子が三人も増えて、もう十分足りてるわよ。あたし、服をあらってくる。」洗い物好きのアワは器に残った雑穀米を手で口にかき込み、そそくさとその場を後にした。「足りてるって、お米じゃあるまいし。」一緒に食事をとっていたつまみ食いが癖のキビは、アワを目で追いながらつぶやいた。すると、ヒエが嬉しそうにキビに教えてやる。「アワの旦那は十人も娶ってるからね。女が多くて嫌なのだわ。」キビはクスリと笑って、残りの雑穀米を平らげると眠いと言ってうちへ帰っていった。ヒエは話す相手がいなくなるとたくさん残っていた雑穀米をさっさと食べてあくびをしながらうちへ帰った。


 その夜中、激しい雨が降った。朝には止んで、男たちが近くの川の様子を見に行くのに広場に集まると、炊事場の方からヒエが慌てた様子で走ってきて大きな声で叫ぶ。


「嫌だわ大変、昨日からアワさんが家に帰らないのですって!!」

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