転校生

小学校入学

僕は家から通える近くにある公立の美濃町小学校に入学した。自分で漫画を書くというよりも好きな漫画を同じ様に描く日々が続いた。他の子は昼休みに外に行ってドッジボール等をしているが僕は一貫として教室で漫画を描いていた。

すると同級生の男の子が声をかけてきた。萩原君いつも教室にいるけど何をしているの?

僕は漫画を描いているよ。まだまだ上手く描けないけど楽しいよ。同級生は僕に言った。

その漫画の絵を描くのもいいけど漫画なら絵だけじゃなくてお話描いてみたら?萩原君、漫画書いてみてよ。

僕はたしかに漫画はキャラクターが話したり、動いたりと動作があるよね。1度やってみるよ。

じゃあまた漫画出来たら見せてねと言われ、僕は出来たらまた見せるね。家に帰り漫画を考えた。

大見得(おおみえ)を切って言ったはいいもののどんなキャラを描いてどんなお話をすればいいのか全く思い浮かばない。どうしよう?

午後7時、お父さんが帰ってきた。僕はお父さんにどのような漫画を読みたいか尋ねた。そうだね、バトル物もいいけど主人公のキャラが出来なかったけど頑張って出来るようになった話なんかもいいかな。

僕はなるほどね。漫画は何ページもあったけどあんなに書けるかな?お父さんは僕に提案した。

じゃあまずは4コマ漫画から書いてみたら?

僕は4コマ漫画と言われてもピンとこなくてどんな感じ?お父さんは新聞を持ってきて僕に見せた。これが4コマ漫画だよ。まずは4コマ漫画から書いてみな。

僕はなるほど、4コマ漫画っていうのがあるのか。ひとまずやってみようと取り組んだ。

そこから数日間かけて僕は4コマ漫画を描きあげた。よし、1度友達に見せようと学校に向かった。

次の日、衝撃な事実を知る。それは僕の漫画を読みたいと言ってくれた同級生の男の子が転校することになった。

僕は男の子に4コマ漫画を描いた自由帳を渡した。ありがとう。大事にするねと学校を後にした。僕は感想を聞きそびれて4コマ漫画の行方が分からずにいた。

そして家に帰りお父さんやお母さんに4コマ漫画を読んでもらうと面白い、もっと読ませて欲しいと言われた。


4年生、部活が始まる

僕は来る日も来る日も4コマ漫画を描いていた。2年生、3年生の時に同じクラスだった男の子や女の子は萩原はいつも4コマ漫画を描いていて面白いと定評があり、僕自身も常にどうすればもっと上手く描けるのかを考えていた。

4年生のクラスで僕は自己紹介て漫画を描いていることを伝えた。するとクラス全員がスゴいという表情をしていた。その後クラスメイトは僕の所に集まり漫画を見せて、読んでみたいという声が上がった。面白いから次も期待してるよ、是非読ませて。

僕が漫画を描くのは他人に見せる為というよりももっと上手く描きたい、面白い話を書きたいとその一心だった。だから周りから見てつまらないと言われても全く気にしない。

1ヶ月後の5月のある日、僕は教室に入ると教室がざわついていた。このざわつきはなんなのか、気にせずにはいられずクラスメイトに尋ねた。

みんなざわついているけど何かあったの?

萩原知らないのか?今日転校生がやって来るんだって。ウワサではその転校生は東京から来るみたいだよ。僕はそうなんだ、って言うか窓側のところに机あったっけ?

するとクラスメイトはいや、昨日はなかったはずだよ。もしかして萩原の隣の席に女の子が座るかもよ。いいな、羨ましいわ。

僕は女の子かも知れないし男の子かも知れない。それは分からないよ。性別関係なく仲良くしたいな。

先生が教室に入ってきた。静かにして。今日からこのクラスに転校生が来ることになりました。では姫川さん入ってきて。

始めまして東京から引越ししてきた姫川香緒莉(ひめかわかおり)です、クラスメイトのみんなと仲良くなりたいです。

先生は窓側の空いてる席に座ってと言われ席に向かった。僕は彼女を歩くのを目で追っていた。

窓側の空いてる席ね……。そしてロングヘアで赤いワンピースを着た香緒莉は席に座り笑顔でよろしくねと挨拶をした。

僕は思わずまさか隣りに姫川さんが!!と大声で叫んでしまった。香緒莉は急に転校生が隣の席に来たらビックリするよね。

僕は彼女を見て心臓が「ドキッ」とした。なんだこの感覚、もしかしてこれが恋なのか?どうやら僕は初恋というやつなのか。困ったことがあれば助けてあげよう、僕はそう思った。

転校生香緒莉のウワサは瞬く間に学年、いや全校に情報が流れて次の休み時間から彼女目当てにクラスに人が集まるようになった。

香緒莉は転校初日で教科書がまだ手元に届いていない。僕はこれは姫川さんが困るからと思い教科書を見せる為に机を近づけた。萩原君ありがとう。

僕はその言葉に嬉しく当然のことだよ、教科書が届くまで見せてあげるね。萩原君って優しいね、さっき何かの絵を描いてたけど休み時間に見せてくれない?僕は人に漫画を見せることは恒例となっており躊躇(ためら)いなんてない。

香緒莉は休み時間楽しみだなと授業を受けていた。

そして授業後、僕は姫川さんに4コマ漫画を見せた。漫画面白いね、もっと読みたいな。

僕は天使のように可愛くてとっつきにくいオーラを放っているように思っていたが実際はそんな事もなく気さくに声をかける優しい女の子だった。

次の日、僕はいつものように教室に向かった。すると淀(よど)んだ空気が流れていた。

萩原、最近姫川さんと仲良くなって調子に乗ってない?何故か僕はクラス男子を敵に回していた。

僕の次に姫川さんが教室に入ると淀んだ空気はなかったように消え、いつもと変わらない平凡な日々に戻った。僕は姫川さんスゴイ、あんな悪かった空気を一変させるとは。彼女を敵に回したらどうなるのか身をもって知った気がした。


相談

香緒莉が転校してきて2週間が経った。ある日、僕と香緒莉は日直になり学級日誌を書いて職員室に持っていった。帰りにクラス全員分の宿題のノートを持っていかなくてはならず先生は男女に分けてすぐに持って行けるようにしてくれていた。

僕は重そうに持つ姫川さんに声をかけた。姫川さん僕が少し持とうか?香緒莉は大丈夫、ありがとう。

2人で階段に登ろうとすると香緒莉は躓(つまず)いてノートが散乱した。

僕は姫川さん大丈夫?ケガしてない?

香緒莉は大丈夫だよ。教室に急ごう。僕は姫川さん歩ける?ノート少し持とうか?

香緒莉はじゃあ少し持ってもらおうかなと何冊か僕に渡した。軽くなった、これなら階段もちゃんと見える。休み時間ギリギリに教室に着いた。

僕は男子、姫川さんは女子のノートを1人ずつ渡した。帰りの会が行われこの日が終わった。

香緒莉は萩原君ちょっと話があるから少し残ってくれる?僕は特に予定もなくていいよと答えた。

みんなが帰った後に教室には僕と姫川さんの2人だけになった。僕は話ってなに?

香緒莉は僕に紙切れを見せた。

「姫川さんは浮かれてるね、もう学校に来ないで女子一同」

僕はこれイジメじゃない?姫川さん先生に言った?

香緒莉はまだ言ってないよ。でもどうして俺に?

転校してきてみんな優しく接してくれてホント嬉しかった。

でもね、男の子は私を顔を見る度に好きです付き合ってくださいってみんなが言うの。女の子は優しくしてくれる子もいるけど殆どの子がなにあの転校生、ちょっと可愛いからって調子に乗ってるって言うの。私って学校に来ない方がいいのかな?

僕はそんな事ないよ、みんな姫川さんに嫉妬(しっと)してるだけだよ。話してくれてありがとう。

香緒莉は1つ気になることがあると僕に話しかけた。他の男の子は是が非でも私と付き合いたいって来るのに萩原君そういう感じじゃないのはどうして?まさか女として見られてないとか?

僕はそんな事ないよ。姫川さんを見て可愛い、まるで天使のようだって思ったのと同時に付き合いっていうことよりもお喋り出来たらいいなって思ったよ。こんな仲良くしてもらえるとは思わなかった。

香緒莉はクスッと笑い萩原君って可愛いね。途中まで一緒に手を繋いで帰ろうよ。

僕は頬を赤くしてまたクラスメイトに何か言われちゃうよ、好きでもない男にそんなこと言わないで。

香緒莉は萩原君って揶揄(からか)いたくなるというかイジりたくなるような感じなんだよね。

僕はそんなこと言っていないで早く帰るよと伝えるとランドセルを背負い教室を出ようとした。

香緒莉は階段を降りて下駄箱に向かう途中足を押さえていた。僕は姫川さん大丈夫?香緒莉は多分さっき階段でぶつけたと思う。先に帰っていいよ。

僕は姫川さんと一緒に保健室に向かった。姫川さんは保健室で治療を施(ほどこ)していた。萩原君姫川さんを連れてきてくれてありがとう。親御さんに迎えに来てもらうから帰って大丈夫だよ。

僕は1人で家に帰った。


部活どうする?

次の日僕はいつものように朝ごはんを食べて家を出た。すると見かけたことのある背格好の女の子が僕の家の方を振り向いてこちらに歩いてきた。

萩原君おはよう、家近いんだねと話しかけた。姫川さんおはよう、最近引越ししてきた人がいるって聞いたけどそれが姫川さんだとは思わなかったよ。

香緒莉はせっかくだから一緒に学校行こうよ。

いや、通学団違うんだから学校でまた会おうと話した。数分後、通学団の子が集まり学校に向かった。

僕は学校に着き、姫川さんは1人で歩いて来てるの?香緒莉はうん、そうだよ。先生からもこの通学団にはいりなって言われてないし。

僕はそっか、朝とはいえ女の子1人で歩くのは危ないから先生に頼んでどこかの通学団に入った方がいいよ。香緒莉はそうだね、萩原君優しいね。

先生が教室に入ってきた。朝の会が終わると香緒莉は担任の先生のもとに行きその旨を伝えた。

すると担任の先生からは近くに住んでる人に頼んで入れてもらうようにと伝えられた。香緒莉は僕のもとに駆け寄り近くの人にお願いするようにってさ。

僕は姫川さんにそれなら明日から一緒の通学団で一緒に行こうか。姫川さんがよければの話だけど。

香緒莉は萩原君ありがとう。改めてよろしくね。

授業が終わった後に担任の先生からプリントが配られた。そこには部活希望届と書いてあり担任の先生から今月までにどこの部活に所属するのか決めて提出するように告げられた。

香緒莉は萩原君は何部に入るの?僕は何部に入ろう、美術部があれば入ろうかなって思うよ。姫川さんは何部に入るの?香緒莉はえっ、ナイショだよ。

しかしこの学校には美術部がなかった。ならば美術部を作るしかないと思い僕は職員室に向かった。

美術部を作りたいので顧問を引き受けて欲しいとお願いをしにいった。1人ずつ頭を下げたがみんな顧問を持っていて掛け持ちは難しいと断られた。やっぱり無理か、他の部活に入ろうかと考えていた。

するとこの年に赴任してきたばかりの女性の佐藤先生が僕に声をかけた。萩原君って言ったっけ?私でよければ美術部の顧問引き受けるよ。

僕は思わず佐藤先生にありがとうございますと頭を下げた。これで絵を描けると喜んでいた。

佐藤先生は美術部で活動するために必要な鉛筆等買ってくるから明日の授業後に美術室に来てね。僕は分かりましたと職員室を後にした。

下駄箱で靴に変えようとすると姫川さんが待っていた。あれ?姫川さんどうしたの?

香緒莉は萩原君が来るのを待っていたよ。僕は待ってた?また誰かに嫌がらせされたとか?

香緒莉はそうじゃなくて、萩原君の漫画の絵を見てたら私も絵を描きたくなって。絵を教えて欲しいの。ダメかな?

その話を聞いて僕はいいよ、美術部を作って顧問の佐藤先生にも就いてもらったから授業後に美術室に一緒に行こう。香緒莉は明日が楽しみだなと一緒に家へと向かった。

僕は2冊の自由帳を取り出して1冊を姫川さんに差し出した。佐藤先生が来るまでこの自由帳で絵を描こうと提案した。

姫川さんは絵を描くって言っても何を描けばいいのかな?僕はそうだね……。お互いの似顔絵描くのはどうかな?香緒莉は下手だけど許してね。

10分後、僕は姫川さんの似顔絵を描き終えた。香緒莉は萩原君描くの早いね。もう少し待っててね。

すると美術室の扉が開いた。顧問の佐藤先生が入ってきて僕に今何をしているの?

僕は姫川さんに1度ペンを止めるように伝え、佐藤先生にお互いの似顔絵を描いているところです。お互いの?昨日職員室に来てたの萩原君だけだよね?

僕はその帰りに姫川さんが絵を描くの教えて欲しいって言われたのでじゃあ美術室に行こうと誘いました。

転校してきた姫川香緒莉です、よろしくお願いします。先生は似顔絵書いてたのにゴメンね。2人とも描き終わったら絵を見せてね。

15分後、香緒莉は描き終わりそれぞれの似顔絵を先生に見せた。萩原君しっかり姫川さんを見てしっかりかけているね。姫川さんは初めて書いたにしては上手いけどもう少し萩原君のここのパーツというよりも全体を見て描いて見た方がいいかもね。

香緒莉は萩原君の描いた似顔絵見せて欲しいです。先生から似顔絵を見て驚愕(きょうがく)した。

こんなに可愛く描いてくれて嬉しい。自分とは思えない。よかったらこの似顔絵もらってもいいかな?

僕は気に入ってもらえたのは持って帰ってもいいよ。先生から今日のお題は似顔絵にしようと下校時間まで絵を描いていた。


もうすぐ運動会

姫川さんは僕に話しかけた。もうすぐ運動会だね。僕は転校してきてもうすぐ1ヶ月なのに部活や運動会と忙しない感じで大変だね。香緒莉は部活は楽しいし運動会は主力メンバーで出る訳じゃないけど楽しめたらなって思うよ。萩原君は運動会イヤなの?

僕はあんまり運動得意じゃないしみんなでやる綱引きや玉入れに出るだけだから影の方でひっそりとって思ってるよ。

クラスの子に聞いたけどフォークダンスあるみたいだよ。男女ペアになって仮装してダンスするんだって、ねぇ一緒に踊らない?

僕と姫川さんが手を繋いでダンスするってこと?いやいやそんなことしようものなら他の男子に何言われるか分からないよ。香緒莉はじゃあお互いに人数余ったら一緒に組もうと約束した。

数日後、僕と姫川さんはフォークダンスを踊ることになった。そこから2週間、休み時間や授業後に残って衣装の準備をする事になった。僕はその旨を先生に伝える為に職員室に向かい佐藤先生を呼んだ。

授業後1時間はフォークダンスの衣装作りで遅くなるので部活行くの遅くなります。先生は分かった、じゃあ2人が美術室に来る時間に行くようにするね。2人のクラスはハチをあしらった衣装で寸法する人、ハサミで切る人等とグループ分けをして1つの事をするようにした。

役割分担したおかげか授業後1時間でもかなり進んだ。僕は姫川さん、美術室に行こうと誘った。

香緒莉は運動会でパネル作らない?僕は先生はどう思いますか?

姫川さんのアイデアはいいと思うけどそうなるとクラス全部のパネル作らないと行けないよ。残りの期間で出来る?

僕は厳しいと思うよ。何かアイデアあればどんどん言って欲しい。これからの参考にするからさ。

先生から今日は黒板を書いてみようとお題が決まり2人で黒板を描いていた。

姫川さんは黒板を描いて先生に見せた。この前の似顔絵より上手く描けてるね。後はもう少し濃く塗る所と薄く塗るところと強弱付けてみてもいいかもね。

後を追うように僕も黒板を描きあげた。先生と姫川さんは食い入るように僕の絵を見て私の描いたのとは違う、何が違うのかな?

香緒莉はさっき先生が言ってたように濃い所と薄い所としっかり強弱出来てる。いやそれだけじゃないくて黒板消しや実際の黒板を見ているような感じがするね。さすが4コマ漫画を描いてるだけあるね。

先生は萩原君、4コマ漫画描いてるの?僕は面白いのかともかく描いてますよ。今から描きましょうか?15分もあれば描けるでその間姫川さんとお話しててください。

先生はじゃあ姫川さんお話ししてようか。香緒莉は東京での話や転校してからどうなのか話していた。すると僕は描き終わりましたと2人に見せた。

先生は4コマ漫画描けるなんてスゴいね。絵が上手いだけじゃなくて内容も面白くて続き読みたくなりませんか?先生は確かにそうだね。

今日はもう下校時間だから2人とも早く帰るように。2人で家に向かって帰っていった。


運動会

遂に運動会当日を迎えた。体操服を着てハチマキを付け開会式が始まり幕を開けた。午前中は玉入れと綱引きに出たら応援に回っていた。お腹が空き早くお昼にならないかなと思っていた。

僕はテントの中にいても暑い、タオルで汗拭いてもどんどん汗が出てくるなと1人で呟いていた。隣で姫川さんもまた暑いからなのか花柄の可愛いタオルで汗を拭いていた。その姿を見て可愛い、この子が隣の席に座り同じ部活のあの姫川さんだよな。

午前中の競技が終わり先生から只今からお昼休憩に入りますとなり僕は家族のもとに行った。玉入れと綱引き出たからもう出る種目ないよ。6月下旬で梅雨の時期に運動会をするってこの学校変わってるね。

母からはお疲れ様、お昼から何か種目出るの?玉入れや綱引き終わったから後はフォークダンスだけかな。すると萩原君〜と甲高い声で呼んでいた。

お父さんは誰かが翔太郎のこと探してるよ。僕は何となく誰が探しているのか分かったが水分補給したくスポーツドリンクを飲んで休んでいた。

萩原君こんな所に居たんだ。母は僕にあの可愛い女の子誰?僕は最近引越ししてきた子で近所にウワサになってたでしょ?そこに住んでる子だよ。

始めまして、転校生の姫川香緒莉です。いつも萩原君に仲良くしてもらっていますと挨拶をした。

父は翔太郎からさっき家が近いって聞いたよ。よかったら家に遊びに来てね。

私遊びに行ってもよろしいんですか?是非今度遊びに行かせてもらいます。僕はこの時、帰ったら鬼の質問されることを予想していた。

お昼を食べ終えてフォークダンスをする為に衣装に着替えた。僕は姫川さんの手を添えると顔を赤くしてあまり強く握ったらいけないと思い手を添えるぐらいの強さでフォークダンスを踊った。姫川さんは萩原君緊張してるの?可愛いね。

そして運動会が終わり家に帰るとその日の運動会の話題ではなく姫川さんのことについて終始聞かれて僕は答えられる範囲で答えた。


姫川さんの悩み

運動会が終わり僕は授業後に美術室に向かった。姫川さんは部活終わりにいつも一緒に帰っていたが先に帰るねと言われることが多くなった。僕は好きな人が出来たのかなと思いそこまで深く考えていなかった。何かあったら相談に乗ったりすればいいかなとそこまで重く考えていなかった。

次の日、学校に行くと姫川さんは同級生のお兄ちゃんが中学生で私の事を妹のように可愛がってくれて付き合うことになったと嬉しそうに話していた。

僕は余計なお世話かも知れないけどその人の事を知らないのに付き合うのはどうなのかなって思うな。

冷静沈着で温厚な香緒莉だが僕に怒った。

そんなこと萩原君には関係ないでしょ。姫川さんは授業後すぐに帰って行った。

僕は美術室に行って佐藤先生に相談した。僕のした行動は間違ってたんですかね?佐藤先生は私が萩原君でも同じこと言ってたと思うよ。あの姫川さんが中学生と付き合ってるのかちょっと歳が離れすぎてて心配だな。僕は恋愛に年齢なんて関係なくないですか?

そうなんだけど多感な時期の男の子だから欲望のまま行くんじゃないかなと思ってさ。

僕は佐藤先生が何を言おうとしているのか察した。僕に何かしてあげられることありますか?

そうだね、今は何を言っても耳に入らないと思うから傍(そば)で見守ってあげて。萩原君は姫川さんのこと好きなの?

姫川さんと僕では雲泥の差、いや星と塵(ちり)ぐらいの差があるので好きなんてとんでもないです。お喋り出来るだけでも幸せだなって思います。

佐藤先生は萩原君と姫川さん2人はお似合いだなって思うよ。傍(はた)から見ると姫川さんの方が萩原君のこと意識してるように感じたんだけどな。とりあえず私も姫川さんの動向を気にするから萩原君も気になることがあったら報告してねとこの日の部活は絵を描く事よりも姫川さんのことで下校時間までずっと話していた。

帰りに僕は姫川さんと手を繋ぐ彼氏らしき人と歩く姿を見かけた。本人の許可もなく後をつけるなんてプライバシーに反することだと思いつつも後をつけた。すると学校近くにある公園に行きキスをしようとしていた。姫川さんは最初やんわり断っていたがそれでもキスをしようとしていて拒絶するとゴメンと謝り公園を出てどこかへ向かって歩いて行った。

午後6時半、きっと彼氏の家に行くんだなと僕は家に帰った。これ以上姫川さんがツラい重いだけはして欲しくないという気持ちが一心でとりあえず明日聞こうと考えた。

次の日学校に行くと姫川さんは泣いていた。思わず僕はどうしたの何かあった?香緒莉は教室だと自分の無様な姿を露呈(ろてい)することになるから後で美術室で話してもいい?僕は分かったと答えた。

この日の給食にデザートでプリンが出た。僕はプリンを姫川さんに渡すと周りから萩原は姫川の事が好きなんじゃないかと話が上がった。

僕は姫川さんにプリンを渡したのは好きだからじゃなくてプリンが苦手だから渡しただけと下手なウソをついた。一悶着(ひともんちゃく)あったが気にせず話を流していた。

授業後に僕と姫川さんは美術室に行った。

話す前に僕は佐藤先生も姫川さんのことを気にかけてたから来てから話してと伝えた。香緒莉は私のせいで萩原君にも佐藤先生にも迷惑かけちゃったんだね。

佐藤先生が入ってきた。姫川さんは先生、そして萩原君私のせいで心配かけてすみませんでした。

姫川さん何があったのか説明してもらえる?

香緒莉は運動会が終わって同級生のお兄ちゃんが中学生で私を妹のように可愛がってくれて付き合うようになったんですが公園で無理やりキスをしようとされてその後相手の家に行ってそれ以上はちょっと言いたくないので……。

佐藤先生は姫川さんツラかったね、何かあればすぐに相談してね。萩原君ずっと姫川さんの事を気にかけてたよ。

香緒莉は今日の給食でプリンを渡してくれたのもきっと気持ちが淀(よど)んでいる私に気を遣ってのことだと思うんですよ。前に萩原君に言われたんですよ。佐藤先生は思わずなんて言われたの?

香緒莉はその人の事をよく知らないのに付き合うのはどうなのかなって。その時は怒って関係ないなんて酷いこと言っちゃたんですよ。人としてどうなのかなって思いますよね。

佐藤先生は今回のことで人を簡単に信用したらダメだって分かったことは決して悪いことじゃないと思うよ。これからは気をつけてね。

話し合いを終えて下校時間となり2人で一緒に帰り家の前で分かれた。あの時公園にいる姫川さんに声をかけていればその先のことはなかったのかと思うと申し訳ない気持ちでいた。

2時間後、僕の家のチャイムが鳴った。すみません姫川ですと母と父は2人で外に出た。

そこには姫川さんとお母さんが香緒莉から一連の流れを聞きました。娘がご迷惑をおかけしてすみませんでした。今日も香緒莉が俯(うつむ)いた表情でホントはプリン食べるのを分けて下さったみたいで。よかったらプリン食べてくださいと差し出した。

気を遣っていただきありがとうございます。香緒莉ちゃん、これからも翔太郎と仲良くしてね。こちらこそよろしくお願いしますと笑顔で答えた。

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