溶けない雪の放浪

あとわと

memory:『 』

_____________ プロメティア帝国。


某所、深夜。





「はっ……はぁっ………!」





その日は、雪が降っていた。

暗い夜道をただひたすらに走る女性は、何かを大事に抱えてひたすらに走る。




「ッ…あ!!」


つまづいてしまいつつも、抱えたそれに傷がつかないように護るように転ぶ。

衝撃でそれは今にも周りが気がつくようなことをし始めそうになる。


____ いたか?!


____いや、いない!!早く見つけろ!




「ッ…ほら、大丈夫、大丈夫。」

その声に彼女は急いで立ち上がり、それをなだめながら、自身の擦り傷を無視して目的の場所にたどり着いた。









夜、孤児院のどこかで誰かが泣いている。

「やだわ、また誰か起きて迷子なのね。お説教です事よ…まったく。」

寝ていたシスターはゆっくりと起き上がり、ランタンを持って院内を見て回ることにした。


_____________ 赤子の鳴き声が、児院のドアの向こうから聞こえる。


「………こんな雪の日に。間違えじゃないといいけど。」

シスターはきっとイタズラか何かだと考えつつ、仕方なくドアを開けた。


ドアを開けた瞬間、イタズラならば良かったとドアを開けたシスターは悲しそうにそれを見た。

そこには、ふたつのヘアピンでとめられた布に包まれ少し霜焼けな頬をし、

手には、


「どうか、幸せになって。スノウ。」


と、書かれた少し血の着いた紙切れを握った赤ん坊が泣いていた。


「まぁ、なんてこと!!可哀想に……!!」

シスターは直ぐに赤ん坊を抱き上げ、他のシスターを数名叩き起しながらその赤子を院内に受け入れることにした。








その数日後、あまり遠くない森でまだ若い女性が亡くなったと話があがったが…すぐその話題は人々の記憶から薄れて消えていった。









(どうか、貴女だけでも)


(これしか出来なかったママを許してね。)

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