第63話 熱き砂塵の神
高位なる神々が招く「神々の遊び」。
神々に選ばれた人間は使徒となり、霊的上位世界「
どんな空間で、どんな
すべては神のみぞ知る。
そして――
フェイたちが飛びこんだ先は、無限に続く砂漠が広がっていた。
砂色。そう呼ぶほかないベージュ色の大地。
なだらかな丘陵が続く先には、雲一つない真っ青な空が延びている。
上半分が真っ青な空。
下半分が砂の大地。
フェイ、レーシェ、パールの三人が飛び降りた先には、そんな砂の世界が広がっていた。
「……あーよかった。ウロボロス戦みたいな急降下はもう懲り懲りです」
きめ細かい砂上に着地して、パールがほっと胸をなでおろす。
と思ったそばから頭上を見上げて。
「暑っ!? な、なんですかこの日差し!?」
「……何から何まで本物の砂漠だな」
じりじりと、頭の天辺が焼け付くように熱を帯びていく。
灼熱の世界。
足下の砂は熱したフライパンのようで、空からは、燦々と輝く太陽から殺人的な強さの熱線が降りそそいでいる。
「へえ、今回は砂漠のフィールドなのね!」
唯一けろりとしているレーシェ。
殺人的な日差しなど意にも介さず、声を弾ませながらあたりを見回して。
「どんなゲームになるかしら。フェイ、『どんなゲームをやるか当てるゲーム』でもして待ってるのはどう?」
「それも悪くないけど、ここは自己紹介が先じゃないか?」
同じく砂漠を見わたす。
ただしレーシェが神を探しているのに対し、
神々の遊びに挑むのは総勢十五人。
「バレッガ事務長が、他の十二人が一足先に来てるって言ってたよな。レーシェ、人間の気配みたいなのって感知できる?」
「気配もなにも丘の向こうで足音が――――」
レーシェが砂の丘を指さしたことに、呼応するように。
「待ちわびたぞフェイ!」
高らかに声を響かせて、砂丘の向こうから一人の青年が現れた。
「今日は、お前の真価を見せてもらおう!」
「……引き続きお世話になります」
続いて褐色の少女ケルリッチ。
さらに彼女の後ろから十人の男女が砂丘を登って現れた。いずれもマル=ラ支部の服を着た使徒たちだ。
「こんにちは竜神レオレーシェ様、そしてフェイ、パール」
ウェーブのかかった茶髪をなびかせた女使徒が、小さく会釈。
眼鏡をかけた知的な風貌で。
「光栄ながら今回のゲームでご一緒させて頂きます。チーム『
「チーム『
「って、なんで私の大事なセリフを奪うのよダークス!?」
「ただの数合わせだと思え」
「最高に失礼ねっ!?」
「フェイよ!」
ダークスが吼えた。
カミィラの訴えをまるで無視しているのだが、この様子では、そもそも本人の耳に届いていないのだろう。
「たとえ神々を相手にした遊戯であっても、俺とお前の雌雄を決する場であることに変わりはない!……と言いたいところだが」
ダークスが声量を落とした。
数メートルの高さの砂丘を、ケルリッチを従えて降りながら。
「今回はお前たちの都市ライヴの一環だったな。俺やケルリッチが出しゃばる幕ではない。貴様のプレイングの支援に徹しよう」
「えっ。ダークスが……?」
その言葉がよほど意外だったのだろう。
同僚でもある『
「あなた、自分が参加するゲームはいつも『俺が主役だ』って表情してるじゃない」
「…………」
ダークスが小さく溜息。
「……賭けに負けた側が、一つ言うことを聞くという約束だったからな」
「はい?」
「何でもない」
そんなダークスの視線が再びこちらへ。
「フェイ、神に挑むお前のゲームプレイングに期待しているぞ!」
「え? ああ、まあいつも通りやるよ」
「ならば覚悟はできているな!」
跳ね上がる黒のコート。
ダークスが片手で天を指し、そして声を張り上げた。
「舞台は整った、さあ出てこい神よ! このダークスが相手をしてやろう!」
「出しゃばらないって話は!?」
フェイがそう突っ込む背後で――
轟ッ、と砂の大地が揺れた。地面がひっくり返るかのような大揺れで、フェイも危うく膝を突きかけたほどだ。
「……ピラミッドか?」
フェイが見つめるのは地平線。
砂が大きく隆起して、あたかも竹の子のように砂漠の表層から浮かび上がってきたのは黄金色の巨大三角錐。
――ピラミッド。
旧時代の古代墳墓が、フェイたちが見上げるなか浮上してきた。
『はいどうもー。ようこそ我が神の遊び場へいらっしゃいましたー』
声は、頭上から。
オレンジ色の小物体が、小さな翼を羽ばたかせて降りてきた。
『あたい、主神マアトマ2世様の領域に暮らす
そして、この
……高難易度の神々は、あえて
……ウロボロスがいい例だ。
それと比べれば。
『全部で十五名……ふむ……』
『我が主神が予定していたより一桁少ない数ですが、時刻となりましたのでゲーム参加を打ち切りますね』
「っ? おい、今なんて――」
『ゲーム説明を開始します!』
フェイが疑問を挟む間もなく。
――神のゲームが始まった。
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