学舎へ贈る言葉@最後のチャイム

 キーンコーンカーンコーン…


 慣れ親しんだチャイムの音が少しさみしく聞こえた。


「そう言えば明日はチャイム切るらしいからこの音をみんなで聞くのも今日で最後になるのかあ…」


「ちょっ!?最後とか言わないでよ!あ、ヤバい…涙出てきた……」


「まだ前日なのに!?」


「あー、お前泣かしたー」


「先生に言ってやろー」


「小学生かっての!」


 ムードメーカーの男子がぽつりと漏らした「最後」というその一言はどこかさみしげだったを一変させ、教室内は一気にざわめき出した。

 溢れる笑顔と響く笑い声。

 いつもの風景、いつもの音、がそこにいた。


「………」


「ん?どした?あんたも泣く感じ?」


「いや、私は泣かんし」


 友人にそう答えた後、私は心の中で呟いた。


 ありがとう…


 それは三年間過ごした学舎まなびやへ贈る最後の言葉。

 別れを告げる『さよなら』ではなく、感謝を伝える『ありがとう』。

 私達は明日卒業式を迎える。

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