PSC -Personal Space Crisis-@迫る女

「…わっ!」


「っ!?」


 驚いた俺は食べていたシュークリームを思い切り口許に押し付けてしまった。


「あはは、 私ですよ先輩」


 そう言ったのはバイト先の後輩で同学年の俺を先輩と呼ぶ律儀な女だ。こいつはバイト以外ですると、その度に俺を吃驚びっくりさせようとしてくるから困る。


「くそ、どうすんだこれ…」


「拭けばいいじゃないですか」


「こんなん拭いたら袖がべちゃべちゃになるだろうが」


「いや袖って幼児こどもですか。ハンカチかティッシュを使いましょうよ」


「どっちも持ってねえよ」


「あー、男子ですもんね。なら私があげますよ」


「っ!?」


 突然顔を近付けられた俺は思わず身を引いた。


「ほら、ほら、んー」


「やめろ!俺は袖で拭く!」


「あっ!ダメですよ先輩!もー、冗談ですって。ほら、ハンカチ貸してあげますよ」


「おっ、サンキュ。……持ってたなら最初から貸せよおおおおおお!」


「照れた顔がかわいかったですよ、先輩」


 どうやら弄ばれたらしい。

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