言葉の迷宮@たった二文字が云えなくて

「あのさ、私さ…」


「ん?」


 小学校入学時からの腐れ縁が八年目になるそいつは、勉強しに来た筈の私の部屋で呑気にポ○キーを食べていた。


「あんたのことが、す、す…」


「す?がどうした?」


「スキ…あり!そのポ○キーもらったあ!」


「甘い!狙いがチョコだけに!」


 …またやってしまった。

 たった一言『』という言葉を云って想いを伝えるだけ。そのコンマ何秒かの行為が私にはどんな勉強よりも数段難しく、どうしてもそれが出来ない。

 面と向かって『スキ』と云おうとするとなぜか毎回がついてしまう。つかなんで本気で拒むんだよ。ポ○キーくらい寄越せよ…


「…お前ポ○キー好きだっけ?」


「別に。普通かな。つか私がスキなのはポ○キーじゃなくて、あ、あ…」


「あ?がどうした?」


「あ、あ…あーっ!ドラ猫がお魚くわえてる!」


「ええっ!ウソだろ!?」


「もーらいっ!」


「ぐおっ!騙された!」


 こうして私は今日も言葉の迷宮から抜け出せずにいる。

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