第307話-2 彼女は二期生とゴブリンを討伐する
「先生、洞窟にゴブリンがいるみたい」
「そう。討伐してまだ半年もたたないのに、復活しているのね」
赤目銀髪が戻ってくる。歩人は既に、他のパーティーへ同じ内容を伝達しに向かっている。数は前回ほどではないが、五十程度だという。但し、上位種はほぼいないという。
運河の建設をされると困る勢力が関わっているのかもしれないと彼女は考える。
「一先ず、この場所に集合……いえ、中央に集合しましょう」
「伝令に向かいます」
彼女たちは最も外側にいるので、中央に向かう方が良いだろう。なにより、ゴブリンの死骸があるのが嫌でもある。
「ご、ゴブリンが一、二、三、たくさん……」
「ううう、ゴブリン怖いのだぁ……」
「はは、任せておくのですぅ。またバッサリ斬り殺すのです!!」
テンションの二極化……どちらも良い傾向ではない。先ずは二期生を集め、落ち着かせるところから始める必要があると彼女は考えた。
十八人のうち、赤目銀髪を洞窟の監視役に任せ、残りは洞窟から数百メートルはなれた開けた林間の草地に集まっていた。
「ゴブリン大集合ね。この前、討伐したばかりじゃない」
「森全体には相当数のゴブリンが潜んでいるのか、どこからか連れてこられているのか……この南の山岳地帯は人がいませんから」
伯姪のボヤキに、茶目栗毛が彼らしく説明を加える。潜在的な敵対勢力であるヌーベ公領がそこにあるからである。ソレハ伯を討伐し力を弱める事ができたのだろうが、魔物を用いた王都圏の浸食は相変わらずなのだと推測される。
「で、どうしますか」
「勿論やっちゃうでしょう?」
青目蒼髪の質問に、赤目蒼髪が答えてしまう。討伐は必須だが、二期生をどうするか……考えどころでもある。
「ゴブリンの村塞の時と同じことをするのはどう?」
あの時は、冒険者のパーティーをサポートにつけ、出来る限りリリアル生に『ゴブリンを殺す』経験をさせた。今回なら、魔力壁を作れる黒目黒髪もいるので、ゴブリンの洞窟の入口で待ち構えて魔力壁で突進する方向を制限してもいい。
「なんなら、手足を斬り落として動けなくしておきましょうか。それで、止めを二期生が刺すというのはどうでしょう」
「それなら数も少なくて済むし安全かもね。いいんじゃない?」
茶目栗毛の提案に伯姪が賛意を示す。彼女もそのくらいで良い気がする。少なくとも、彼女と一緒にいた三人は経験をしているのだから、同じような経験をさせるのは良いだろう。
「では、段取りを決めます。二期生は私が合図をするまで、洞窟から離れた待機場所で気配隠蔽を展開して待機。一期生はゴブリンの巣穴に煙玉を投擲し、出てきたゴブリンを討伐してください。上位種には必ず、バディで対応する事。組合せは班の際のペアで。私とセバスは二期生と洞窟の間で全周警戒。以上、よろしい?」
「装備は長柄を使っても良いでしょうか?」
赤目蒼髪はウイングド・スピアを好む。勿論、構わない。伯姪は盾と剣であろうし、赤毛娘はメイスだ。
二期生が見守る中、一期生がゴブリンの巣穴を包囲する。巣穴の外にいたゴブリン達は既に赤目銀髪により駆除されている。
「生きている魔物は久しぶりな気がするな!」
アンデッド討伐が増えているので、そんな気がする一期生達。だがしかし、ドラゴンだって討伐した実績があるじゃありませんかと誰かが言う。
「あー それは先生方にお任せします。学院生には荷が重たいです」
「何とかなるかな」
「何とかするんだよ!!」
今回は彼女は出来る限り見ているだけに努めようと思っている。帝国に潜入するなら、伯姪や赤毛娘が討伐の中心になるからだ。とはいうものの、うずうずしてしまうのは仕方がないと思うのである。
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