第272話-2 彼女は帝国の魔術師にグール狩りを見せる
結局、スケルトン相手には聖騎士の必要性が低いという事もあり、一旦、全ての聖騎士は大聖堂に待機し予備戦力とすることに変わった。内部に侵入されたアンデッドに知らぬ間に本陣を落されない為である。
加えて『聖魔装』の消耗も激しく、一旦、王都の増援が到着する前に整備を行う必要性もあった為である。
「それで、その変なヘッドバンドをしているわけね」
帝国の女魔術師である冒険者ヴィーは老土夫相手に聖魔装の魔力の補充を行っている彼女を目にしてそう呟いた。
「川の警戒は既に手配済みだけれど、今日はもう来ないでしょうね」
「私もそう思います。ある意味一回こっきりの奇襲でしょう。警戒されれば効果も出ませんし、知らぬ間にグールが増殖して市民がパニックになることが目的であったでしょうから」
「今晩はないと思うわけね」
「見張りも出していますし、不意打ちは恐らくないでしょう」
「だね」
ヘッドバンドをしげしげと見つめつつ、「なんか王国は違うねー」と呟く見た目詐欺の女魔術師である。
「ヴィーは王国語上手ですね。どこで習ったのでしょうか」
「あら、あなたの帝国語や古代語も中々のものじゃない。そうね、この話は長くなるかもしれないけれど……」
「いえ、手短にお願いします」
ヴィーがカクっとなったが無視をする。
「私はもともと王国の端っこの寒村の出身だからね。今でもあるのかはわからないけれど、ド=レミ村ってところで育ったんだ。だから、成人の少し前までは村人Aをやっていたわけ」
『おい、随分と危険な村人Aだな』
ヴィーの過去に『魔剣』がツッコまざるを得ない。なぜこれほどの魔力と魔術師としての能力を持つ冒険者が王国の寒村で育つことが出来たのか。何かそれ以外に秘密があるのではないかと、そう思いを巡らせることになる。
「まあ、そのうち帝国に来ることがあったら、その時にでも話すよ。色々訳があって今は帝国で冒険者をしている」
彼女はふと思ったことを口に出す。
「たまには故郷に帰らないのですか?」
彼女の質問に、女冒険者が答える事はなかった。
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