新品


 失恋してボロボロになった心を買い換えた。傷一つない新しい心を彼女以上に愛おしく眺める。そうして彼女がどれほど美しくなかったかを再確認し、自身を慰めるのだ。


 侮蔑的な言葉を並べ、徹底的に彼女の価値を削り、割り、踏んだ。彼女の価値を粉になるまで砕いた。そして最後に火が放たれて灰になる。


 捨て猫みたいにボロボロになった彼女を助けた雨の日が炎に包まれる。思い出も感情も火事で焼けるあの日に置いていった。恩知らずの彼女の皮膚が爛れていく。


 もう心が傷つくことも擦り減ることもない。ただ一つだけ不満があるとするならば、心と体がうまく噛み合っていないということだ。


 ちょうど体の老化を気にし始めていた頃なので、これまた新しい体に買い替えた。全てが新しくなったので鼻歌を歌いながら外を歩く。しかし、いつものような楽しさはどこにもなかった。


 全てが不鮮明に見える。青空が曇り、木々が朽ち果て、建物が生え、アスファルトが砂を吹く。歪で奇妙な世界が襲いかかる。見る目も新しくなっていたのだ。


 狂った世界に耐えきれなくなって見る目を買い替えた。見えた世界は鮮やかで清々しい気分になった。


 晴れた空を眺めていると彼女と再会した。砕いて燃やしたはずの価値は幻だったかのように、彼女の中には威厳に満ちた新品の価値が保管されていた。


 その宝石に見惚れて思うことはただ一つ。

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