第127話
それからは二つ目の都市も特に問題なく落とし、さらには三つ目の都市にまで攻め込む。
「おいっ!戦車を…いや、このさい整備中の砲塔をパーツだけでも良い!!ありったけもってこい!!適当な端材で固定して即席の大砲にしてぶっ放せ!」
「くそっ!!このキモい奴はどっから来やがったんだっ!!」
「知るかっ!良いから手を動かせよっ!!」
「報告は聞いているな!?あの人腕ナメクジには極力近づくな!周囲には神経毒のようなものが散布されてるぞ!近づけば動けなくなって食われるだけだ!!」
「黒竜は軍に任せろ!!あの人間の腕まみれのナメクジみたいな化け物は遠距離から撃ちまくれ!」
「どうせ食われるなら爆弾担いで特攻してやんよ!!」
「逃げろーっ!!逃げるんだぁっ!!」
「地雷ゾーンにて目標被弾…ダメです!人腕ナメクジにはバリケードがわりにしかなりません!!」
三つ目の都市ともなると情報を共有し、それを元に対策を練る時間は十分にあるせいか、思っていたより街の人間の抵抗が激しいことを除けば三つ目も問題なく攻略できそうだ。
ドーラに対する対応は変わらず、しかし人腕ナメクジと呼ばれてるらしい人腕ナマコに対しては地雷を始めとする罠や、爆弾片手に特攻してきたりと物理的にも精神的にも時間が要りそうな戦術も絡めて向かってくる。
特に問題なのが爆弾を担いでのやぶれかぶれの特攻である。
死体が爆弾でバラバラになってしまうと、その巨大さゆえに飛び散った肉片を集めることができるほど小回りが利かない人腕ナマコでは御遺体回収が出来なくなってしまう。
人腕ナマコにとっては地雷を含め、その程度の攻撃では悪あがきにしかならないのが幸いか。
巨大旅客機並みのサイズと特殊な防御スキルを持つゆえに、多少の爆発物など殆ど意味はない。
というのも、人腕ナマコの持つスキルである『超キャッチ結合組織』は地球のナマコを始めとした棘皮動物の「潰したりしようとして刺激を受けると刺激を受けた部位の組織が非常に柔らかくなる」という特徴を持つ「キャッチ結合組織」という組織を魔王クリエイターによって再現、強化した代物であり、そのおかげで人腕ナマコに物理的な攻撃はほぼ意味がなくなっている。
普通の地球産のナマコの場合、キャッチ結合組織のお陰で、種類によっては握りしめているだけでバラバラになるほどに柔らかくなることすらあるのだが、これは言い換えれば「物理的な刺激に物理的な反発をせずに、透過」する能力となる。
超キャッチ結合組織スキルとはその能力をより即効性に、かつ強化したことで物理的なダメージを殆ど無効にするスキルである。
仮に銃弾や大砲が人腕ナマコの体に当たったても、当たった瞬間に人腕ナマコの体組織が柔らかくなることで水を貫くように貫通。
そして、貫通したあとですぐに元の体の固さに戻る。
一時的にでも体組織に穴が空くので、体液が多少失われるが、巨体である人腕ナマコからすれば微々たるものであり、超再生スキルもあいまって、実質的にはダメージゼロとなる。
爆弾による衝撃も殆ど意味はなく、熱で多少表皮が焼かれてもそれもまた超再生スキルですぐに治ってしまう。
つまり何が言いたいかといえば、無駄死になので爆弾特攻はやめて貰いたい。
だからといって無抵抗に食われろとまでは言わないけれども、懸命に対抗しようとする姿を見ると考えないようにしている罪悪感が首をもたげるので、あまり見ていたくは無い光景である。
ちなみに現在の御遺体ストックは25万人分ほど。
人腕ナマコ一体につき、10万人分ほどを回収できるで、三つ目の都市に攻め込む段階ですでに人腕ナマコ2.5体分の材料が溜まっていることになる。
あまり時間をかけず、かつ特に作戦もなく雑に攻め込ませてこれなので、流石に人口が多い世界なだけはある。
御遺体ストックがめちゃめちゃ溜まりやすい。
これだけあれば人腕ナマコくらいの巨体を持つ魔王を10体くらい、材料を多めに使ってスキル容量増強をした強めの魔王でも4、5体は創れる。
全部使って、ドーラ以上の魔王を生み出すのもありかも。
当初予定していた戦闘用魔王は人腕ナマコを先に創ったためにまだ創っていない。
人腕ナマコの貯蓄囊も2体分は埋まってしまったわけだし、ここらで一体くらいは完全な戦闘用を創ってみようかと考える。
現状戦闘用と言えるのはドーラと、相変わらず念のための退路確保用として後方に配置してる魔王の2体のみ。
いや、後方に置いてある彼女も完全な戦闘用とは言い難い…超進化スキルを持ってるから闇太郎や聖女たちに比べれば戦闘も出来るが、彼女を戦闘に使うのは些か気が引ける。
せっかく、命を拾ったのだから。
さて。
では、どうするかと悩む。
御遺体ストックを満タンにして取っておくか、今のタイミングで戦力増強に使ってしまうか。
切り札を取っておくかどうかで悩む。
悩むが、そう。
創るべきだな。
取って置かなくても、この調子ならばまたすぐに御遺体は貯まるだろうの精神で御遺体を使い切ってしまうことにしよう。
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