プラのペンギン

 蜂を見た。しかし、それを蜂と言うにはあまりにも大きく、蜂とは思えない外皮を持っていた。ビル10階まではありそうな体に、黄金に輝く肌を備えていた。なのに、その蜂を目撃したのは私一人だった。白昼、公道のど真ん中に静かに立っていたというのに、目撃したのは私一人だったのだ。蜂は別に何をするでもなく、そこに在ったのだ。居たのだ。知人に話しても誰一人信じてくれなかった。

 約1週間後、蜂は再び現れた。今度は正面から私を睨んでいた。その刺さるような視線を感じてなんとなく、女王蜂だと思った。ただ睨むだけで、相変わらずただそこに在るだけの蜂は、私が瞬きをするとそこから消えていた。

 なんとなく、実家にあった大きな蜂の巣を思い出した。久々に帰省しようと思う。

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