第3話 ジャンプ

 くるくるって、フィギュアの選手がジャンプして回ってる。


「すごいすごい!」


 ハナは、まねをして、たたみの上でジャンプした。

 でも、一回転もできなくて、しかも着地失敗。どでんとしりもちをついた。


「くっふっふ」


 笑い声がして、縁側の方を見ると、となりの家のしゃべる猫、オンちゃんがすまして立っていた。


「なによ、見たの?」


 ハナは口をとがらせた。


「きみ、ジャンプがへただな」


 オンちゃんは、きゅっと身をちぢめると、縁側から庭に向かってぴょーんとジャンプした。

 体がすーっと一直線に、天まで飛んでいくかのような大ジャンプ。


「えーっ、きれい……」


 オンちゃんは、すたっ、と着地して得意そうにひげをぴくぴくさせた。


「どうやったら、あんなにきれいに飛べるの」

「星をつかむように飛ぶんだよ、ハナ」

「星?」

「星をつかむまで、どこまでも、どこまでも高く飛ぶんだ」


 ハナは、天井を見上げた。


「どこまでも、どこまでも高く……」


 天井のずっと上に、星が輝いた気がした。

 ハナは、飛んだ。

 天井をつきぬけて、宇宙のはてまで。

 もう少し。

 ぎりぎり星をつかめそうで、でもつかめず、ハナは落ちて、たたみの上に転がっていた。


「見た? オンちゃん、あたしのジャンプ」


 振り返るとオンちゃんはもういなくて、暗くなりはじめた空には、うっすらと一番星がまたたいていた。

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