そして覚めて出会う

「はっ」


 起きた。


 腕。

 空中に出してみる。

 前に腕が出てくる。

「わお」

 前に出すと前に出てくる。素晴らしい。

「時間も」

 時計。どこかにないかな。

 何か掴んだ。

「なに?」

「えっ誰」

「えっ」

 彼。彼の鼻をつまんでいた。

「あっごめん」

 離れる。

 彼がいる。


「あれ、これも夢だっけ」


 彼。目を閉じたまま。


「あのう、なんで、その、ここへ?」


「寝ぼけてんの。俺の部屋だけど、ここ」


「え?」


「もう朝か」


 彼が起き出してきて、カーテンを開ける。


「夜じゃん?」

「夜、ですね」


 記憶。

 戻ってくる。

 普通の人生。

 普通の生活。


「寝ぼけてんの?」

「うんごめん。ねぼけてた。なんか変な夢見ちゃって」

「どんなの?」

「わすれた」

「じゃあ変な夢かどうか分かんねぇじゃん」

「あ、ほんとだ。不思議」


「なんだっけ、ふたつ前?」

「ふたつ前?」

「うん。なんかふたつ前に、あ、これか」

 ベッドからぬいぐるみが出てきた。

「わたし、ぬいぐるみ、あなた」

「いつもそういう順番で寝てんじゃん。ふたりでぬいぐるみ抱いてさ」

「うん」

「どうする。何か食べるか。それとも寝る?」

「ねるっ」


 どんな夢かは忘れたけど、また見たい気もする。

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