第43話 les quatre saisonsへようこそ

「わぁ! いいお天気! 昨日までの雨が嘘みたい!」


 茉莉香は眩しそうに空を仰いだ。

 雨上がりの日差しがキラキラと輝き、新芽がいまにも芽吹こうとしている。

 桜の花は散り始め、季節は春から初夏へと移っていく。


「あ、早く出かけなきゃ。もうすぐ時間だわ」


 今日は、沙也加と駅前のカフェで待ち合わせをしている。

 茉莉香はマンションの緑地帯を抜けると、自転車を走らせた。

 心なしか、ペダルが軽い。



 そして、ポストに一通の手紙を投函した。


 






 ―― 知佳。――

    

お久しぶりです。


お元気ですか?

突然お手紙を差し上げて、

さぞかし驚かれたことでしょう。

この手紙がなぜ、あなたに届いたかを

不思議に思われるかもしれませんが、

ご協力いただいた方にご迷惑を

かけしてしまうので

お話できずにいることをお許しください。


知佳。私はどうしても、あなたに伝えたいことがあって手紙を書きました。


一つは、私が今も知佳を大切な友達だと思っていること。

もう一つは、貴女が幸せでいて欲しいと願っていること。


いろいろなことがあったけど、

私には、貴女やクラスメイトのことを

なかったことにはできません。

今までも、これからも……


できれば会ってお話をしたいのですが、

もし、私に会うことを躊躇われるのでしたら、




les quatre saisonsに来てください。



季節のお茶と美味しいお菓子でおもてなしをします。

ちょっぴり渋いダージリンも、アッサムのミルクティも、爽やかな果実のお茶も あります。

きっと知佳の好きなお茶もみつかります。



les quatre saisonsに来てください。



お店の人も、お客様も優しい人ばかりです。

きっと心休まるひとときが過ごせるでしょう。



les quatre saisonsに来てください。



お茶を淹れながら待っています。





茉莉香








 今日は楽しい日になりそうだ。


「それに……」


 来週には夏樹が帰国する。


 弾む心を込め、力いっぱいペダルを踏む。

 風を切りながら、自転車は街を走り抜けて行った。














 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=   第二章あとがき   -=--=-=-=-=-=-=-


今回で第二章は完了です。

読者の皆様には、心より感謝の言葉を申し上げます。

ここまでのお話は、過去を振り返り、未来を探る、茉莉香にとって『心の旅』でした。

そうすることで、茉莉香は自分の道を見つけることができたのです。


新章からは、より現実的な問題が茉莉香を待っています。

これからも、茉莉香と夏樹の活躍をお楽しみいただければ幸いに存じます。


それほど間をあけず、第三章を開始する予定です。


今後ともご愛読のほど、よろしくお願いいたします。



それと……甘いです。

……第三章は甘いです。……その、いろんな意味で。いろんな意味で……( *´艸`)


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