おれが裏切って、裏切られていく物語(旧題:冒険者は冒険を………しちゃダメなの?)

ロロロロガガン

第1話 転生しちゃった

「あ〜〜、だる。も〜宿題やりたくねー」


世はコロナ時代。世間はコロナを恐れ、外出禁止令を出し、遊びに行くことも出来ない、まさに映画やドラマのような、激動の時代へと突入した………なんちゃって。


「馬鹿なこと考えてないで宿題やらなきゃだけど、絶対終わんねーよなこれ」


おれは今年大学一年生になった堀部雄太ほりべゆうた。大学生になったら初彼女ゲットだぜ!……と息巻いたはいいものの、コロナというクソウイルスのせいで、キャンパスライフを送れずに、東京から地元に帰ってオンライン授業を受けている、悲しいチェリーボーイである。

地元に帰って友達と遊ぼうと思ったが、みんな仕事をしているか、地元に帰ってきてない連中ばかりなので、やっぱりここでもオンライン授業を受けるしかないという、拷問のような毎日を送っている。

おれはそんな生活に刺激が欲しくなり、最近は誰もいない時間帯の夜に前は嫌いだったランニングをするようになった。

ところが不思議なことに、中学や高校は嫌いだったランニングが、今では結構ハマっていて、週に3回程度は走るようになった。

これが外出自粛の反動か、元々好きだったけど、先生たちから強制されていたから嫌いだったのかはわからないが……。


「て、そんなことより宿題……。うん、明日やろう。キツイ。これ以上したら死ぬ。おれよく三時間も頑張った、偉い偉い。」


と言うときはいつも期限に間に合わないのだが、それは言わぬが花だろう。

というか座りすぎてケツ痛い。


「ん〜〜ッはぁー……よし!ランニング行こう!」


ゆっくり背伸びをして深呼吸。

そのあとは気分転換のランニングだ。

玄関に行き靴を履き、そのまま歩いていつも走っているところまで行く。


「早く走りたいし、あそこまでダッシュで行ってみるか!」


おれは素早く走り出し、少し先の交差点まで走り抜けようと思った。


「フッ!フッ!フッ!……あと少し、頑張れおれ!」


これは余談だが、おれは自粛期間が始まってから、よく独り言を言うようになった。

まぁ多分、一人アパートに住んでる時とか、声がしなくて寂しかったから、テンション上げようと思って英単語とか大きな声で読んだり、文章を復唱したりしていたせいだろう。

こういうこと考えるのも、高校とか中学は全く無かったら、コロナの影響だ。絶対そうだ。

ホントコロナ許せん。◯ね!


閑話休題


「と……着いたか。ふーーー」


とりあえず交差点まで着いたので、ゆっくり息を整えることにする。

おれは元々長距離走も短距離走も速くないし、体力もないから、マラソンとかでも毎回下位争いで楽しくなかった。走るのが嫌いだといったが、自分が遅いのを自覚してるから、周りから「足遅いね」と言われるから、嫌いになったんだと思う。

それがなければ好きだったかも……なんて、意味のない妄想だが、そうだったのかもしれないと、最近思うようになった。


「ん……?あのトラック大丈夫か?」


おれは右手側から来ているトラックに対して、そんな感想をもった。

そのトラックはゆらゆらと左右に蛇行し、不安定な運転をしていた。

これが後ろとか前に車がいれば、煽り運転とかと勘違いしそうになるが、トラックは一台だけ。

ペーパードライバーが運転しているのだろうと気にせず、信号が青になったので、渡ることにする。


「休んだし、ここからまた走っていくか!」


おれは走りたい衝動に身を任せ、全速力で交差点を渡ろうとした。

……のだが


「あれ……?おれ走ってる?」


おれはトラックを気にせずに交差点を渡ろうとしたが、いきなり横から衝撃のようなものを受けて、そこから意識が混濁していた。

今何をしているのかも分からない。走っているのか。歩いているのか。立っているのか。


「あ″〜いや、これ轢かれてるっぽいぞ」


どうやらおれは血を失いすぎて動転してしまっていたらしい。

倒れてることにすら気づかずに、独り言を呟いていた。

そして周りには何も気配がない。

恐らくトラックは居眠り運転か何かで、轢いたことにすら気付いてないのだろう。

なんと呆気ない最後だろう。

親に大金出してもらって私立の高校からその大学へ行かせてもらい、おれは親に何も返せずに終わってしまう。

酷い親不孝者だ。

おれより下には誰もいないからいいが、兄ちゃんにも迷惑かけるかも。ホントごめんなさい。

父ちゃんと母ちゃんもごめんなさい。

せめて一言ぐらいさよならの挨拶とか、そういうのしたいけど、正直もう限界です。

………コ◯ンくんとかであるダイイングメッセージ書こうかな?

よし、そうしよう。


「あ…りが………」


あ、無理。おれ死んだわ。

ホント、すいませんでした。父ちゃん母ちゃん、お元気で。








「ォ……オギャー!オギャー!」

「奥さん!生まれましたよ!元気な女……あれ?男の子?あ、いや、元気なお子さんが生まれましたよ!」

「はぁはぁはぁ………、ありがとうございます。顔を見せてくれませんか…?」

「もちろんです!ほら、綺麗な黒髪と紫色の瞳!見えますか?」

「はい……、この子は女の子ですか?」

「いえそれが、女の子ではなく男の子がお産まれになりました」

「あら…、そうなんですか?困ったわ、私女の子以外の名前考えてないのに……。どうしようかしら」

「今考えてわからないのなら、もう少し考えてからお決めになっても宜しいのでは?そういった方も多いのですよ」

「いえ……、そう…ですね、アーシィーと名付ける予定だったので、この子は男の子だから、男っぽくアースなんてどうかしら?」

「まぁ、素敵な名前ではないですか!それで宜しいと思いますよ」

「じゃあ、この子は『アース』。そう名付けることにします」


え〜と、いやぁ、さっきまで思考がフリーズしちゃっててあれだったんだけど、もしかしておれ、転生しちゃった?


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