獣人族が支配する世界で
百合之花
プロローグ
第1話
突然と。あくる日のこと。僕は死んだ。
トラックに轢かれそうな猫を助けて死んだのだ。
自分で言うのもなんだが、英雄的で素晴らしい行いだったと胸を張って逝けたはずだ。きっと今、僕の棺桶の前で泣いているであろう両親は猫を助けて死ぬなんてなんて立派な息子だったのだと咽び泣いているところだろう。
いや、嘘なのだが。
それも当然である。猫を助けて死ぬ?むしろ、大罪人もいいとこだ。
バカじゃないのか?
普通に考えて猫を助けようとして轢死するくらいなら、見捨てて無事に家に帰って来いよと誰もが思うはずだ。少なくとも僕が親であればそう思う。
さらに言えば、猫を轢き殺して寝覚めが悪いことになりそうだと身構えた運転手は残念、人間1人を轢き殺すと言うよりショッキングな出来事に出くわし、トラウマを抱えてしばらくは夜しか眠れなくなること請け合いである。
いや、下手をすればトラック運転手をクビだろうか。
それどころか、人ひとりを轢いたせいでトラックは横転するなり、街道に突っ込むなりして、より大きな被害を出したかもしれない。
とにかく、あまり良い結果にはならないことが目に見えていた。
つまり、何が言いたいかというと僕は猫なんざ轢かれそうになっても間違いなく助けないということである。
そこのとこ分かっているのだろうか。
泣けるぜ。
そして、輪廻転成は本当だったらしい。一度は聞いたことがあると思うものの、一応は解説しておくと輪廻転成とは死生観の一つであり、死ぬと別の生き物に生まれ変わって、生まれ変わった先の生物が死ぬとまた別の生き物に……と人の魂というか精神のようなオカルト的物質、かは分からねど、それっぽい何かがさまざまな生物に輪廻する、もとい生まれ変わり続けるという思想のことである。
さらにそこから、生まれ変わり続けるのは疲れるでしょ?だからその生き地獄ループを抜け出しましょう?すなわち天国的場所へ行こうよ!という結論に繋がるらしいのだがその辺の細かい話は知らないし、今はどうでもいい。
とにかく僕は輪廻転成を果たしたというわけだ。前世の記憶を保持したままね。
通常、業だの罪だのと一緒に記憶も来世に持ち越すことは出来ないらしいのだが、なぜか僕は出来てしまった。
第二の人生、ヤッター!となるはずだった。
しかも異世界、魔法もある。
が、致命的な問題がいくつもあったのだ。
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